少し前のわたし - わたしの初恋4


結城和林(わりん)さん@ぐるぽん☆のお勧め作品。

今までのこと

これは、まだわたしと平治さんが恋人同士になる前の話です。

家庭教師としての平治さん

平治さんは出会ったときから、とってもいい先生でした。

どの教科でもすぐに教えてくれるんです。難しい問題でも、ちょっと首を捻って考えるだけで答えが分かってしまうみたいなんです。

わたしが難しい問題に詰まっても、平治さんは横からその問題を見れば、すぐに正解がわかるんです。でも、平治さんはそこで正解を言ったりはしません。

そうじゃなくて、わたしがその問題を解けるようになるにはどうしたらいいか考えてくれるんです。何も言わないときもあるし、ヒントを出してくれることもあります。

わたしがちゃんと答えを出すと、『正解です。よく分かったね』と言ってくれるし、どこかに間違いがあると、それをさりげなく言って後は、わたしが間違いを直すまで正解だとは言いません。

初めのころはそれが少し、もどかしい感じでした。でも、わたしが『正解』すると平治さんも嬉しそうに笑うので、だんだん楽しくなってきました。・・・その笑顔に、わたしは惹かれてしまったのかもしれないですね。

最初の頃の話

平治さんは、わたしのお父さんの親友の息子さんです。お父さんは、友人の息子がわたしが行こうとしている大学の1回生になっていると知って、平治さんを紹介してもらったんだそうです。

最初お父さんはわたしに、「とても真面目な人だから、しっかり教えてもらいなさい」と言いました。そのせいか、わたしは平治さんをすごく生真面目な人で融通が利かないのかと思っていました。・・・実際は、平治さんはたしかに生真面目な人でしたけど、とっても優しくて柔らかい感じの人でした。

何度か家庭教師をしてもらって、わたしはすぐに平治さんに惹かれました。お母さんにずっと平治さんの話ばかりしてしまったので、お母さんには平治さんを好きなことがすぐにわかっちゃったみたいです。

そのときに、お母さんは、「がんばりなさいね」とだけ言ってくれました。

でも、その次の家庭教師の回で・・・思い切って、「彼女とか、いるんですか?」って訊いて。「うん、いるよ」と言われてしまいました。

もちろん、その彼女というのは亜希さんのことです。でも・・・そのときは、顔も分からないその彼女さんに、物凄くもやもやしたものを感じました。これが、嫉妬なんだ・・・と気づいたのは、何日もそんな気持ちを抱えた後でした。

嫉妬と、憧れ

それからわたしは、少しだけ平治さんとの授業が辛くなりました。

「桜ちゃん、最近元気ないね。どうしたの?」

(・・・平治さんの、せいなんだモン)

そう思ったけど、そんなの言えるわけありません。わたし、元気ですよ、と言ってごまかすだけでした。

平治さんとの授業は少し辛くなりましたけど、それでもわたしは平治さんが好きでした。平治さんの顔を見ていると、もやもやした気分と嬉しい気分が交じり合ってきます。

「ねえ、平治さん? 彼女さんと、どんなところに行くんですか?」

わたしは、たまにそんな質問をして平治さんを困らせました。・・・せめて、平治さんが彼女さんとどんなことをしているのか、知りたかったんです。

平治さんは、授業に関係ない話だ、という理由で答えるのを渋っていました。本当のところは、年下のわたしにこういう話をするのが恥ずかしいというのも大きかったと思います。

でも、平治さんは最後にはちゃんと質問に答えてくれました。平治さんと彼女さんが行くのは、大学の近くの喫茶店とか、大学から離れた繁華街の中の店とか、そういうのが多いみたいでした。

そんな話をしているときの、平治さんは嬉しそうでした。・・・聞かなきゃよかったかな、と思いましたけど、平治さんの嬉しそうな顔を見ていると、平治さんと彼女さんのお付き合いを応援したくなるみたいな、そんな気分にもなるんです。

わたしは・・・平治さんの恋を応援する代わりに、先生のいなくなった部屋でひとり、平治さんと恋人同士になっている自分を想像していました。平治さんと一緒に、一緒に自分の知っている喫茶店とかお店とかに行くところを。そうすると、少しだけ気が晴れますけど・・・それは結局、想像です。眼を開けると、わたしは自分の部屋の中にいます。平治さんと勉強していた机が目に映って、現実に引き戻されるのでした。

亜希さんとの別れ

こういう状況が続いていたのが少しずつ変わったのが、秋以降のことです。つまり、平治さんが亜希さんと別れてからのことでした。

・・・いま、平治さんと亜希さんが別れたときのことを話すのは少しためらいがあります。だって、このことを話すときには、どうしても「このことがなかったら、どうなっていたのか」を考えてしまいますから。

亜希さんは、「桜ちゃんの授業のことが別れるキッカケにはなったけど、それは単にキッカケに過ぎないのよ」と何度か言ってくれています。「だから、わたしと平ちゃんはいずれ別れてたと思うの。だから、わたしと平ちゃんが別れてなかったらどうなったかとか、そういうことを考えるのはやめなさい」って。

それでも悩んでしまうわたしを見て、亜希さんも困った顔で、「そういう真面目で一途なところが、平ちゃんとそっくりなのよね」と言うのです。・・・それはともかく。

平治さんが亜希さんと別れたショックで、心がグラグラしたままやってくる日が何日か続きました。・・・たしか、平治さんと亜希さんは高校のときからの付き合いのはずです。ショックなのも無理はありませんよね。

そのあと、わたしが平治さんを問い詰めた日から後は、平治さんは元通りに近い感じになりました。

それどころか、わたしには前よりもっと優しくしてくれるようになりました。

身体に触れる

平治さんは、家庭教師としてわたしとの関係をよくすることも大事だと思って、いろんな話をしてくれていました。けれど、わたしは女で平治さんは男。絶対に、わたしに触わるようなことはありませんでした。

触らないというのは文字通りの意味で、髪にも、肩にも、手にも、とにかく身体に触れないという意味です。優しい言葉は掛けてくれましたし、笑いかけてもくれましたけど、ボディタッチは絶対にありませんでした。

でも、わたしが平治さんに悩みを話してほしいと訴えた日から後は、そうじゃなくなったんです。少しだけ、でしたけど、肩に触れてくれてくれるようになりました。

あのクリスマス前のデートでは、わたしが平治さんの手を握ったら平治さんはそれを振りほどかないで握り返してくれたんです。・・・わたしの恋心を平治さんは気づいていたって言ってましたから、わたしを傷つけないためだったのかも、しれませんけどね。

とにかく、平治さんはそういう軽いボディタッチをしてくれるようになりました。髪の毛だけは、恋人同士になるまで一度も触ってくれませんでしたけど。わたしと恋人同士になった後で平治さんは、「髪の毛を触っていいのはその人に一番親しい人だけだからね」、と言っていました。

ひとりH

恥ずかしい話、ですけど、何度か平治さんと身体の接触があってから、わたしは平治さんを少しだけHな想像に登場させるようになりました。

ひとりHは、中学生のときに友達に教えられてからしていました。・・・じつは、ほとんど毎日、です。

でも、そのときまでは自分の知っている人を使ってHな想像しながらすることはありませんでした。周りの知っている人からそういう姿を想像するのが、なんとなく怖かったというのもありますし・・・平治さんに関しては、そういう目で見たくない、という心が働いていたんだと思います。

でも、平治さんに肩を触られて、手を握られて。その感触が、わたしに残っていたんでしょうか、わたしはそのときから平治さんを思いながらひとりHをすることが何度かありました。

恋人になってから

大学に合格して、はじめてのキスをしてからのわたしは、ますます平治さんをそういう目で見るようになってしまいました。・・・さすがに、いきなり平治さんとHをするようなことは想像しませんでしたけど。実際に体を抱かれて、キスはされたわけですから、その記憶を思い出して一人でするようなことは結構ありました。それから、平治さんに触られていると思って胸を触ったり、アソコをいじったりするのもやるようになりました。

実際に胸やアソコを平治さんから触れてもらえたのは、それから2ヶ月も先のことなんですけど。でも、そこまでの2ヶ月間の間も、平治さんは少しずつわたしに親密に触れてくれるようになりました。わたしが机の上に手を置いていたら、平治さんがそっとその上に手をかぶせてくれたり。ふとした拍子にわたしの髪を撫でてくれたり。そういうことを思いだすと、ドキドキしました。そのまま、ひとりでしてしまうことも何度かありました。

今、そういうことをするのは・・・平治さんにしばらく会えないときとか、寂しいときとかに、ちょっとだけです。

結び

・・・わたし、今日はこんな話をするつもりじゃなかったんですけどね。ホントは、片思いのときに平治さんをどう思っていたかとか、そういうことを話そうと思ってたんです。

でも、よく考えてみると・・・平治さんのことは、初めから今までずっと大好きだったとしかいえないんですよね。顔を思い出したら嬉しくなるとか、声を聞くだけで嬉しいとか、とっても単純なことしか話せないと思うんですよ。

だから、ちょっとだけ尾ひれをつけたつもりだったんですけど・・・つい話さなくてもいいことまで、話しすぎちゃいました。失敗でしたね。


今日の話は、ここだけのことにしておいてください・・・。

2006/2/1 佳情。

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