その日、わたしは初めてピアスをつけた。
隠していた耳を露わにし、髪は上で纏めた。
思ったよりも、よく似合っていると思った。
わたしは用事もないのに、街へ出て歩いてみた。
街の人が皆わたしの耳を見ている気がする。
そんなこと、あるわけないのに、耳に視線を感じる。
血みたいに赤い小さな石をつけた耳。普段は髪に隠している耳。
耳を見せるだけで、こんなに恥ずかしいものかしら。
行くあてもなく、TUTAYAで適当に歩いていると、後ろから声をかけられた。
「細川・・・だよな?」
それは大学の同級生だった。それほど親しいわけでもないが、名前くらいは覚えている。島田っていうんだっけ。
わたしが彼の声に反応して振り返ると、島田くんは意外そうな顔をした。
「髪、上げたんだ・・・それに、ピアスなんてしてたっけ?」
「まあね」
あまり彼とは親しくないので、ぶっきらぼうに返事をしてしまった。
でも、内心嬉しかった。
誰か知っている人にピアスについて指摘してもらったのは、初めてだったから。
「すげえ似合うよ。ピアスも、髪も」
彼が、わたしを褒めてくれる。
男性に褒められて、嬉しくないのは女性じゃない。
わたしも、今度はしっかり返事をした。
「ありがとう」
わたしは褒められた嬉しさで、自分から島田くんに話しかけた。
「ところで、今日はどうしたの?」
わたしの問いかけに、島田くんは曖昧に笑った。
「うーん、なんか借りようかなって思って。適当に見てただけだよ」
「わたしも、適当に見てただけ」
二人の間に、奇妙な親近感が生まれた。
「面白いのっていうか、ホント、適当なのが見たいんだよね」
「そういうとき、あるよね」
「今日はどうすっかな。聞き覚えのあるヤツとかでもみるかな」
「え、たとえば?」
「ホラ、やっぱり昔の映画で名前は聞くけどみたことがないやつってあるだろ? 古いのだったら『ローマの休日』とか、少し古いのだったら『地獄の黙示録』とか」
「ああ・・そゆこと」
わたしたちはこういう会話をしていた。
しかし、彼はなにかにつけ、わたしのピアスをじっとみているようなのだ。つけたばかりのピアスなので、悪い気はしなかったが、何かこそばゆいような気分だ。
結局、話をしている間中、彼はずっとピアスを見ていた。
彼があんまりにもピアスをみつめてくるので、何だか身体が熱くなった。
身体の一部、アクセサリの一部とはいえ、男性にこれほどあからさまに視線を浴びるのは初めてのこと。
・・・みつめられることを意識して濡れることもあるのだと、このときわたしはハッキリ気づいてしまった。
彼はその後、DVDを幾つかか借りた。わたしは何も借りなかった。気がそぞろになっていたのだ。
そのあと、島田くんはわたしに手を振って別れようとしていた。
心よりも口が先に動いた。
「今からうちに来ない?」
わたしは家に帰ると、ホットパンツにタンクトップという格好になった。オトコの同級生を部屋に上げるにしては挑発的だった。
耳には、ピアスをつけたまま。
普段ならひとりでもこんな格好はしない。もう少し慎んだ格好にしている。
ほとんど付き合いのないオトコを部屋に連れ込むのも、露出の多い普段着にするのも、普通のことじゃなかった。
みられてる。
島田くんに。
むき出しの肩や、太ももや、赤い石のついたピアスを。
・・・彼は必死になってわたしの鎖骨や耳を凝視していた。
わたしは視姦されて、ドロドロに股間が濡れていくのを感じた。
恐ろしいことに、このときわたしは普段どおりに振舞っているつもりだった。
自分がオトコを誘い、誘惑しているのだと気づいたのは、翌日島田くんを部屋から送り出した後になってのこと。そのときは、わたしは自分が変わっていることにさえ無自覚だった。
ただ普段どおりに振舞っているつもりだったのだ。
とにかくそのとき、島田くんはわたしを鼻息を荒くして見つめていた。
わたしもオトコに身体を見られることを望んでいた。
彼はハアハアと息を荒げてわたしを見つめていたが、突然わたしを押し倒し、胸を掴んできた。
わたしは拒否するどころか、自分から彼を抱きしめた。
そうするのが、当然であるように。
普段は丁寧な愛撫を好むわたしだったが、そのときは乱暴にされればされるほど感じた。
島田くんは乳房を乱暴にもみしだいたが、わたしは高い鳴き声を上げて悶えた。
「きゃうん、ああああん、あん、あん、あん、あん、」
オトコに媚びているとしか思えないような声。
古臭い言い回しだけど・・・、娼婦、みたいな。
それでもわたしは、自分の変化に酔いしれていた。
・・・わたしはさらに高い声を上げた。
「ああん!!」
島田くんがわたしをクンニしている。
「ここの複雑さは・・・細川の耳と同じだな」
クンニをしながら、彼はそんないやらしいことを言った。
「いやあ、何よそれえ・・・」
「それにこのポッチ。細川の耳についてる、赤い石のピアスみたいじゃないか?」
そういいながら、彼はわたしのクリと耳たぶとに同時に触れてくるのだ。
彼の愛撫は、不思議な感触だった。
触られているのは、耳とアソコだ。
それなのに、まるでアソコがふたつあってそれを同時に愛撫されているかのような錯覚を受ける。
きっと、さっきの彼の台詞が暗示のように働いているのだ。
「ああん、やめて、ダメよ、ダメよ」
「もっと触ってくれなきゃダメってか?」
意地悪く島田くんは言った。
「・・・そ、そう、そうよ、もっと触って、ああああ」
わたしは恥じらいもなくそう言い放ち、腰を淫らに振り、耳を晒し、胸を反らせる。
わたしはこのとき、変態オンナに成り下がった。
やがてわたしは、ベッドで自分からオマンコを広げ、手招きした。
そうすることに、躊躇いはなかった。
オトコの股間にあるモノを突っ込んで欲しい。そんな生々しい欲望がストレートに出た瞬間だった。
島田くんは目の色を変えてオマンコの色を観察し、そして自分のチンポをわたしにあてがって、押し込んだ。
「はあああああああ・・・・あ、・・・ん、」
満足の吐息を漏らしたわたしは、そのまま下から彼の動きをねだった。
ねだられるままに、彼もピストンをはじめる。
わたしの彼に体を揺すられるまま感じ続け、彼の下で喘いだ。
「いいわ、そう、もっと、もっとよ・・・・もっと速く、もっと奥を突いてよ・・・」
彼にいろいろ注文をつけて、わたしは自分の一番感じるところを探しながら自分でも腰を振った。
わたしも息が荒かったが、彼の方も荒い息を吐き、喘いでいる。
自分が組み敷かれているのに、まるで彼を責めているような気分だった。
彼は時々、「ああ、締まるよ」とか、「そんなに中が動いたら・・・」とか、甲高い声で色っぽい喘ぎ声を出した。さっきは感じさせてもらうことで夢中になったが、今度はオトコを苦しめることでわたしは快感を覚えていた。
明らかに、わたしはオトコを苦しめることでの快感を覚えていたのだ。
そして彼は、わたしを一度もイカせないまま、情けない顔をしはじめた。
情けない顔はいよいよ崩れて、泣きそうになり、射精を予告した。
「ああああ、でるうっ!!」
直前で抜けたオチンチンは、外に出たとたんに暴発したようだ。射精は勢いよく流れていき、わたしのおへそを飛び越えた。精液は大量で、線を形どった。
わたしはその精液をすくい、舐めてみた。
自分の身体のものではない、不思議な味がした。
その味を噛み締めていると、肉体的にイッたわけでもないのに、いやに満足だった。
・・・わたしは耳のピアスを触りながら、わたしのベッドの上に崩れ落ちている島田くんをぼうっと見ていた。
ピアスは運命を変える、なんていう。
運命はともかく、ピアスはオンナを変えてくれる。
・・・ピアスを外した翌朝、彼を家から送り出した後で思った。
こんなわたし自身も、こんなセックスも悪くない、と。
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