ゴダイヴァ


脅迫

「要求は何だ」

「金は要らん」

「では、何を求めるんだ」

「この事件の担当は、女か」

「そんなことは関係なかろう」

「答えろ」

「指揮官は女だ」

「いいだろう。ソイツでも誰でもいいが、とにかく35歳未満の婦警を素っ裸で白バイに乗せろ。常時、時速15キロ以下だ。その状態で市街を3時間以上走ったら、人質を解放しよう」

「何っ!?」

「要求は以上だ。ああ、人に見えるように明日の午前10時からから午後4時までの間にやるんだ。ソイツに警護をつけたりすることは許さん。そして確認のため、今日のうちに全てのテレビ局に通告して、白バイで走るところを実況させろ。モザイクをかけさせたりすると、市長の命はないぞ。

ふ、ふ。市民に決して覗いたり、TVを見ないように、いくらでも言い含めて結構だぜ」

「待て、何のためのそんなことを!」

「さあね。要求はそれだけだ。じゃあな」

電話は切れた。

苦悩

「どこからかけていたの?」

「携帯電話を使っているようですので、市街地域からというだけでそれ以上の特定は不可能です! 前の通話のときとは相当離れた位置から通話してきています。特定は難しいでしょう」

「要求を守らない場合は、人質を殺す、か・・・」

「そして現に市長は行方不明になっていると・・・」


市の県警は、市長誘拐事件について切迫した状況に追い込まれていた。

何者かに市長が拉致されたのだが、手がかりはないというときに犯人らしき人物から電話があったのだ。

市長の失踪はまだマスコミに知られていない。悪戯の可能性は少なかった。

そして犯人の要求は、警察官らの神経を逆撫でするようなものだったのだ。

金は要らない、というのは犯人との接触が格段に減ってしまう以上警察に不利だった。

そして、事件担当の女刑事、台場雅子は難しい決断を迫られていた。

誰か県警の人間が、辱めを受けなければならない。

誰がそれをするのか・・・。

出発

長い苦悩の末、台場は翌日自ら全裸で白バイにまたがり、街に出た。

すべては人質の安全のため、そして、いつかは犯人をとらえ、街の治安を少しでも回復するという高邁な理想のために。

そう、彼女がこの決断を選んだのは、この街を守るという自分の警察官としての心から当然のことだった。


しかし、彼女を待っていたのは・・・。


警察署の前から早くも人の山を築いている、眼を血走らせ股間を屹立させて台場の全裸を拝もうとする男どもの姿だった。


自分の理想。

守ろうとする、市民たち・・・。

その市民たちは・・・その市民たちは・・・こんなことを。

自分の裸体を覗きにきて、ただ興奮するだけなの?


署を出たとたんに絶望的な気分になりながらも、台場は街へ向けて、バイクを走らせていた。

意図

どうしてこんなことになってしまったのか。

すべては犯人の策略なのである。

この性道徳のないような時代において、他人のために全裸で街を練り歩くという貴婦人ゴダイヴァのようなまねをすれば、男は全て全裸の女を覗きに来るに決まっているのだ。

さらに犯人が巧妙だったのは、TV局にこのことを伝えたことだ。

センセーショナルな事件に飛びつくハイエナのようなマスコミは、勇気ある全裸の婦警を覗いたりしないように警告しつつ、その実、隠し切れない好奇心をもって報道をするに決まっているのだ。

それは毒ガスのように電波に乗って全ての家のTVに届き、やがて男どもをすべてピーピング・トムに変えるのだ。

いまや、台場の通る全ての道は、熱狂的な男どもの渦で満たされていた。その男どもは道路にまで溢れ、渋滞を巻き起こし、止まった車から降りた男どもがまた渋滞を作り、という「ゴダイヴァ覗き」の渋滞を作っていたのだった。

羞恥

さて、台場の方に話を戻そう。

(あああ・・・みられてる)

台場は羞恥の極みで運転をしていた。

犯人の言いつけどおり、常時15kmの徐行運転で。

そうすると、血走ったオトコどもがいやでも目に入る。

だらしない顔。

前を押さえるオトコ。

中には、赤黒いチンポを出してしごいているものさえいる。

(なんて、不潔な)

台場とて、処女ではない。しかし、昼間からこうした状況でオナニーを始める男をオトコだからというだけで納得してしまえるほど擦れてもいなかった。

やがて、集団の中でオナニーを始めている人間を見て、自分もオナニーを始めるオトコが出始めた。

色も、形も、大きさも。

それぞれに異なるペニスが、台場を向いてシコシコとオトコの手でしごかれていた。

だが、現実にはそれぞれオトコの手でしごかれているペニスも、彼らの想像では・・・。

そう、この台場。

台場の膣内で、台場の膣にしごかれているところを想像しているに決まっているのだ。

そうでなければ、台場が今白バイのハンドルを握っている白い指か。

あるいは、こぼれんばかりの巨乳に挟まれているところか。

羞恥のあまり真一文字に引き締められている口か。

台場はそんな想像を打ち切り、ただ運転に集中しようと務めていた。

精液

だが、台場の集中は2、3分で打ち切られた。

「ウウッ」

若い、中高生とおぼしき男性から放たれた新鮮な精液が、台場の顔にかかったのだ。

サッと頬を紅潮させた台場だった。台場は匂いと温かさと粘つきで、それがオトコの最後の液体であることを悟った。

(こんな、オトコたちのなぶりものに・・・)

台場は悔しさで涙が出そうになった。

だが、そんな表情は、オトコどもの劣情を刺激するだけだ。

台場の目に涙が浮かんだ瞬間、白バイと台場の大きな乳房、そして頬に三筋の精液の筋が飛び交った。

オンナの象徴たる乳房にまで精液を受け、台場は衝撃を受ける。

ホロリ、と知らず涙が頬を流れた。しかしその涙も、頬にかけられた精液にあたって、混じっていった。

美女の涙を見て、また新たな精液が台場と白バイに降り注ぐ。

新たな精液は、台場の黒髪と背中に張り付き、白バイのタイヤにも掛かった。

台場の涙は、止まらなくなった。

後悔

(あんな、評判の悪い市長なんて、ほうっておけばよかったのだ。

そうでなければ、別の人間に頼むべきだった・・・。精液を受けて喜ぶオンナも、裸を見せて喜ぶ女も、いくらでもいるだろうに・・・どうしてわたしが、こんな、こんな・・・)

台場は走り始めて20分程度で絶望的な後悔にさいなまれた。

すでに顔も乳房も、オトコたちの精液でねとねとになっていた。

顔にも遠慮なく精液がかかるので、台場は目をかばいながら運転をしていた。

滑らかな腹には、乳房に掛かった精液が垂れてきて、さらに下のオンナの秘密の部分を目指そうとしていた。

すでに陰毛には精液が張り付き、数ミリリットル程度は秘所に到達しているものと思われた。

そして、膣内にも、わずか数ミリの何千、何万分の一かの精液が、侵入して・・・。

長い髪にも精液が付着し、黒髪は白く汚れてしまっていたのだった。


後悔を続けながら走り、さらに10分が経過したときには、さらに台場は精液まみれになった。

「おおおお〜」

「ウッ」

「ああ、あ・・・」

そんな声を上げながら果て、道路や台場に精液をかけていくオトコたち。

老人も、若者も、関係なく・・・。

中には、そんなオトコと台場を侮蔑の目で冷ややかに見る女たちもいた。

(インラン)

女たちは、視線をもって台場をけなした。

(これは、仕事・・・わたしはインランじゃない!)

叫べるものなら叫びたかった。

だが台場にできたのは、黙々と白バイを運転することだけだった。

通信

・・・そうして、射精と歓声、侮蔑、後悔が交錯する中、1時間と少しが経過した。

(もう・・・止めたい。今すぐバイクを降りて、走って逃げて、あの橋から河に飛び込んで、このオトコの汚れた汁を洗い流したい)

そんな妄想めいたことさえ考え始めてしまう台場。

責任感の強い台場でさえ、もはや限界が近づいていた。

相変わらず、道路の端からは青臭い匂いが立ち込めている。

あんな、80代のジジイですら、わたしの痴態にチンポをおったてて・・・くそ、くそ。

警官にあるまじき暴言を心の中で吐きながら、台場はもはや眼を閉じて運転を始めていた。


そして一時間半。

不意に、白バイに取り付けられた無線が反応した。

「・・・わたしの要求どおりにしてくれているようだね、よしよし」

「!!っ、き、き、貴様ーーーーーーっっ!!!!」

こしゃくな声を聞き、台場は反射的に魂の叫びを上げた。

「どこにいる、出て来い、ひねりつぶしてやるぞ!!」

普段は女性らしいと評判の台場は、このときばかりは獅子のように吼えた。

「精液にまみれ、精液化粧をしたその姿でですか。いま白バイを降りたら、あなたはもうそこにいるオトコたちにレイプされるだけですよ」

「馬鹿なっ、そんなことをすれば、警官をレイプしたことになるぞ、集団強姦で全員現行犯逮捕だ!」

「おやおや、あなたの周りにそれだけのことを考え、レイプを押しとどまる人間がいるでしょうかね。みなさい、そこにいる少年なんか、きっと童貞じゃないんですか。もう真っ赤な顔で精液まみれのあなたに射精しようとしているじゃないですか」

サッと眼を走らせると、なるほど、小学生かとみえるような幼い少年までもが、自分をみてハアハアとペニスをしごいている。

眼を閉じて、いかにも気持ちよさそうにしている・・・。

台場は、犯人にこれまでのことをじっと見られていたらしいことを悟り、羞恥を感じた。

「くっ、だが、わたしを犯そうとしたところで、どのみちすぐに応援が・・・」

気を取り直して台場は吼えるが、犯人は冷静だ。

「馬鹿馬鹿しい。わたしも確認していますが、警察の方々はあなたに単独行動をさせていますよ。どんなに急いだって、応援がそこにいくのに5、6分はかかるんじゃありませんか。その間、何人があなたにレイプするんでしょうね。

それに、あなたの周りには、あなたを中心に70kmに及ぼうかという大渋滞ができていて、それがみんなあなたの見物に来ているんですよ。そんな大集団を相手にしていたら、警察の応援はことによると2、3時間はかかるんじゃないんでしょうかね。

そして、なにより。全国のTVの前の青少年が、あなたの痴態をみているんですよ。きっと、視聴率は80%を超えています。ねえ、そんなショウが打ち切られたら、きっと視聴者だって暴動を起こしますよ」

「何を言うんだ! このヤロウ、くたばってしまえ!」

とうとう台場は、暴言を吐いた。

これには、犯人も呆れたらしく、

「やれやれ、まともに話ができないほどお怒りらしい。頭を冷やした方がいいでしょう」

そう言って、犯人は通信を切ってきた。

その後、すぐに警察本部からの通信に切り替わる。

「台場警部。今のは犯人からの要請でつないだ通信です。しかし・・差し出がましいようですが、いささか冷静を欠いておられたようで、犯人も・・・」

「・・・・何も言うな、何も聞きたくない」

「お気持ちは察しますが」

「どうせ貴様も、ザーメンまみれのわたしを見てチンポを立てているんだろう? フン」

「だ、台場警部! 落ち着いてください!」

しかし、台場は一方的に通信を打ち切った。

後は淡々とバイクを動かし、黙々とオトコどもの精液を浴びていくるのであった。


嫌悪の感情は麻痺をしたが、心はなお痛みを伴って軋んでいった。

苦行

走行開始から1時間50分が経過した。もう間もなく、終了まで1時間程度である。

台場はもはや、何も信じられない気分でただ運転をしていた。

体中にまとわりついた精液は、乾いたパリパリのものもあれば、新鮮なままのものもある。

走り始めのときから考えれば、台場の格好はもうドロドロのザーメン女という感じだ。

顔、髪、首はもとより。

胸、鎖骨、腕、腹にも精液はかかっている。

台場自慢の美脚にも、精液が掛かっている。精液が飛んだこともあるが、中には台場まで走っていってわざわざ精液を直接脚にかけてきたような痴漢もいた。

背中にもべったりと精液は掛かっており、お尻にもそれは垂れていた。

唯一守られているのは性器だけであろう。

それも、わずかずつ精液を含み始めているのは確かだが・・・。

台場の乗った白バイも、もうベトベトになっていた。

タイヤにも、機械部分にも、荷台に当たる部分にも精液は付着していた。


台場はここに来て、もう悟りの境地のような状態になっていた。

精液をかけられてもなんとも思わなくなり始めていたのだ。

これは仕事だ。誰にもできない、いま、わたしだけができる仕事だ。

使命感で自分を縛り上げることで、心に傷を負わないようにしたのだ。

もっとも、心に傷を負わないもう半分の理由は、なれてしまった、あきらめてしまった、そうした理由だった。

インタビュー

さらに精液を浴び続けて2時間半になった。

そのとき、後ろの方からバイクがつけてきて、不意にマイクが差し出された。

ワイドショーの有名な記者だった。

「台場警部、今のお気持ちを一言!」

「・・・勤務中だ、話しかけないで欲しい」

台場は一瞥だにせずに応えた。

「犯人に対して、言いたいことはありますか」

「とくにない」

「専門家からは、犯人への対応のまずさが指摘されていますが、その点はいかがでしょう」

「・・・・・・」

「黙ってないで、応えてくださいよ〜」

「・・・・・・」

「ひょっとして、この状況を楽しんでいらっしゃるとか?」

「不謹慎だぞ、貴様!」

いかずちのような声を上げて、台場は一喝した。

だが、リポーターはムッとした表情になっただけだった。

「黙っている方がよほど不謹慎なんじゃないでしょうかね。インタビューしてるんだから、まったく」

「こんなときにインタビューなどする方が、よほどどうかしている」

「報道の自由ですよ。報道の自由」

「とにかく、これ以上はダメだ。犯人だってこれを見ているんだ」

「ま、そうかもしれませんがね。今だってこれを実況中継しているんだし」

「わかっているなら、あと30分・・・いや、15分くらいか。黙って走らせてくれ」

「ですから、質問に答えてくださいよ」

「・・・・今の気分は最悪だ。犯人への対応をウントコ言うヤツは、とりあえずザーメン風呂で2時間半浸かってからわたしの文句を言え。以上だ」

「今の言葉、全国放送で流れましたよ。では、また」

「二度とくるな!」

バイクは離れていった。


そして、台場はさらに淡々と運転した。

射精は相変わらず続いているし、歓声も相変わらずだ。

女たちの侮蔑も、頂点に達しようとしていた。

そんな中、台場だけは淡々と悟ったように運転を続けていた。



そして、ようやく、犯人の告げた時間まで残り2分を迎えた・・・。

市街地での終焉

バイクは、市街地に入っていた。

大勢の市民の前で、裸の台場が白バイを駆っていた。

男も女も、大勢台場を取り囲んでいる。

台場は、自分がこの難行に挑み、そして達成しようとしていることに感動すら覚え始めていた。

ああ、大勢の市民がカウントダウンを始めてくれている。

56、55、54、53・・・

ああ、年末のカウントダウンでさえ、これほど興奮したことはない。

これほど感動したことはない。

いよいよ、終わるのだ。

いよいよ、人質は解放されるのだ。

29、28、27、・・・

そして、わたしの苦行も終わるのだ。終わったら、真っ先にバイクを降りて、身体を拭こう。そして、警察署にかえって、人質の解放の報せを受けて、・・・ゆっくりと眠りたい。

9、8、7、6、5、4、

そして、思う存分眠って、・・・どうせなら、休暇をとりたい・・・。

3、2、

でも、今は、

1、

ただ、この苦行が終わったことの喜びを・・・

ゼロ!!

狂宴

しかし台場を襲ったのは、血走ったオトコたちの襲撃だった。

カウント終了と同時に、オトコたちは台場を白バイから引き摺り下ろし、コンクリートの地面に組み敷いてレイプを始めたのだ。

「へへへ、こんな上玉、初めてだぜ!」

「おい、口があいてるぞ!」

「俺は、アナルだ!!」

台場は何が何だかわからなかった。

人質は解放される。そしてわたしもこの苦痛から解放されるのではなかったのか。

だが、この膣を襲うオトコの肉棒は何なのだろう!?

アナルを襲う激痛は何だろう?

叫ぶこともできない理由は??

台場の目は驚愕に見開かれたまま、3穴責めを受けていた。

「うううう、出るぜ!」

「俺もだ! この女、アナル処女じゃないのか? 叫んだりしないけど、大丈夫か? イッちまったのか?」

「さあな。口も凄いぜ、うううう」

そして、膣の中でオトコの精液があふれ出した。

膣内に射精されたことを知った大場は、おもわず口のペニスを吐き出して絶叫した。

「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!」

そして、発狂したように暴れだす。

だが、それも長くは続かなかった。

裸足でコンクリートの上を歩き、オトコたちに取り囲まれていた台場は、そのまま地面に崩れ落ちたのだ。

昨日からの疲労、白バイに裸で3時間乗り続け、精神的に限界に来ていたこと。

すべては悪く働いた。

気絶した台場は、その後警察が事態を沈静化する2時間後までオトコのなぶりものにされ、膣もアナルも口も精液まみれになり、膣とアナルから出血していた。命には別状なかったが、そのまま台場は4日間も入院した。

結末

市長は、その日の夕方、市内の公園で裸のまま縛られて放置されているところを発見された。犯人からの通知によるものだった。

裸だというのに、市長の汚らわしい肉体に悪戯をしたものは一人もいなかった。

いっぽう、台場が痴態をさらしていた間に、全国で窃盗や銀行強盗が起こっていた。

そのうちの大規模なものは今回の誘拐実行犯のものと思われたが、大半は便乗犯によるものだった。

そして、台場のヌードが3時間に渡って報道された実況中継は、犯人の言ったように日本の最高視聴率をマークした。


今回の件で警察の威信は地に堕ち、最近の不祥事と相まってさらに信頼を落としているということである。

そして台場自身は、発狂こそしなかったが、早々に警察を辞職し、実家で抜け殻のようになっているということである。だが、台場の周りの人間以外は台場の行動を讃えもせず犯人を憤りもせず、淫乱女が犯人の口車に乗ってザーメンシャワーを堪能し、犯されただけだ、という程度にしか認知していないようにも思われる。

・・・何が、いけなかったのだろうか。

2006/3/28 佳情。

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