ある種、合コンの席ほど露骨なものもないだろう。
昨今、『いい女』『いい男』=雰囲気のいい人、楽しい人というのは、そう外れてはいないと思う。
そういう意味では、瞳は『いい女』からは程遠かった。
瞳について。
まず容姿。大学生にもなって中学生と間違われるような顔で、飲み屋に入るときも、カラオケに入るときも、店員から免許証や学生証の提出を必ず求められる。
そして容姿にたがわず、お酒が一口も呑めない。飲み屋ではオレンジジュースや烏龍茶がメインだった。
では喋りが面白いのかといえば、そんなこともない。喋るだけでも精一杯だ。もちろん、合コンの席では誰にも喋りかけられない。憐れな目で友人を見て、黙っているだけ。
・・・ちなみに、歌も歌えない。
結果として、瞳は合コンにいって人気があったことが一度もなかった。
さらにいえば、瞳の友達は少ない。
誰に対しても、顔を見て話すことができない上、口を開けばぽそぽそと喋る。
男性ならずとも、瞳と話していると何か苛立ちを覚える生徒が少なくなかった。。
結果的に、瞳の友人というのは面倒見のよいタイプの女友達と、その友達に従うグループのメンバーがしぶしぶ、という感じだ。
面倒見のよいタイプの友人にしても瞳に過剰に頼られるのが好きなわけでもないし、グループのメンバーは瞳のことを半ば蔑視している向きがある。
瞳は困った立場にあった。
ある日、瞳は学生食堂で昼を取ろうとした。
散々人に抜かされつつ、ようやくレジを抜けることができた瞳だったが、今度は席がない。
知らない人の隣には座れないし、そうすると座れる席がなくなってしまう。
顔を伏せたまま、瞳は食堂を出て、外で食べることにした。
ところが、外に出ても場所がない。知らない人だらけで、おまけに男性ばかりなのだ。
しょうがなく、瞳は食堂にとって返し、どこかが空くのを待っていた。
『どこかがあく』といっても、瞳の場合は完全に一人で座れるテーブルができることを意味している。
5分待っても、テーブルは空かなかった。
ようやく10分になろうかというとき、近くで声をかけられた。
「・・・ここに座ったら?」
みれば、4人がけのところを一人で使っている男性だった。大学生か、院生か・・・歳は、よくわからない。
男性というだけで、瞳は遠慮してしまう。
ふるふる、と首を振る瞳。
「でも、ずっと立ってるでしょ? いいの?」
ふるふるふる、とさらに強く首を振る瞳。
「うーん・・・でもねえ」
男性が困った顔をしているが、困っているのは瞳も同じだ。
どうしたものか、と瞳が思っていると、よそから身体をぶつけられて瞳はつんのめった。
・・・10分以上もお盆を持っていれば、手は疲れている。
瞳はガクン、と手の力を抜いてしまい、お盆の中身を全てひっくり返した。
身体を当てたのは女生徒だったが、瞳を見ると、ふん、という顔をして立ち去っていった。どうやら彼女は、瞳がどういう生徒か知っていたらしい。
瞳はといえば、口元に手をやって呆然としている。
反応したのは、瞳に話しかけた男性だけだった。
男性は雑巾を借りてきて床を拭いたばかりか、瞳に謝って、もう一食用意してくれるという好意を見せた。
瞳がいくら男性が苦手でも、そこまでされると同席せざるを得ない。
「ありがとう・・・ございます・・・」
俯きながら、瞳はお礼を言った。
相手の顔も見ないで礼を言っているのは、失礼に当たるだろう。
男性はあまり気にしていないようだったが、一般的にはあまりいい気はしない態度だ。
「まあ、僕のせいでもあるわけだし。気にしないで」
そういわれて瞳は手を合わせ、箸を取って食べ始めた。
男性は半ば以上定食に手をつけていたが、瞳はまだ全部残っている。
瞳の食べる速度はとても遅かったが、男性は極力それに合わせて食べるようにしていた。
瞳の食べ方というのは、みていてまだるっこしい。
たとえば、おわんに盛ったご飯を食べるにもいろいろ方法があるだろうが、瞳の食べ方は、まるで米粒を一粒ずつ食べているような錯覚を受ける。
もちろんそんなことはないのだが、箸の上げ下ろしが遅いのだ。くちゃくちゃと噛んでいる回数が多く、飲み込むのも異様に遅い。
飲み込んだ後は、はあ、とため息でもついているような顔をしてから、またご飯を箸でつまむ。
その繰り返し。
男性もさすがに瞳に完全にペースを併せることはできなかったらしく、瞳が3分の1を食べ終わる前に食事を終えてしまった。
それでも男性は一応席を立たずに、瞳の食事を待っていた。
男性は大した忍耐力で瞳が食事を終えるまで待っていた。
瞳はおずおずと頭を下げた。
男性はニコリと笑うと鞄を持ち、立ち去っていった。
お金を払おうと思っていた瞳は、その機会を失ったことに気づいたが、後の祭りだ。
さて、その翌日。
瞳は例のお友達グループと一緒に食事を取っていた。
リーダーシップを取るのは、麗華。瞳にも気を遣ってくれるので瞳は何となくこのグループに所属している。
そのまわりには、3、4人ほどの女子大生。まあ、綺麗な子もいるし、可愛い子もいる。遊んでいる子もいるし、少し真面目な子もいる。
その中にあって、瞳は極端に静かで・・・暗い。
グループの中では、ひそかに瞳への反発、瞳を排斥するというような潜在的な意識が働いている。
瞳もまた、それを感じてはいる。
瞳は抗議できないというだけであって、周囲の雰囲気を察することができないような人間ではなかったからだ。
・・・ただ、それだけにこのグループの居心地も悪くなりがちであり、昨日もグループとは別行動を取っていたのだった。
なんとなく昨日と同じ日替わりランチをとって歩いていると、昨日出会った男性にまた会った。
「おや、昨日はどうも」
瞳は先に声をかけられ、あたふたとしたが、上目遣いで(瞳の方が背がかなり低いので)男性を見上げ、迷った挙句、ペコリと頭を下げた。
それから、瞳は昨日の昼食代を払い損ねたことを思い出し、男性に390円を渡した。
「ん? これは?」
男性はただ質問しただけだったが、瞳はかわいそうなくらい怯えた。
男性は首を捻っていたが、390円という額から昨日の昼食代であることに気づいたらしい。
「ああ、アレは僕のせいでもあるわけだからね。コレは受け取れないよ」
男性は気さくにそういった。
そう言って、お金を返してくる。
瞳はまたも怯えている。
「・・・うーん、どうしようかな。どうしても、払いたい?」
瞳は男性を恐る恐る見上げる。
「わかった。まあ、受け取っておくよ」
そういって、男性は革の財布の中に390円をしまった。
瞳はその後、麗華に質問を受けた。
「瞳? あれ、法学部の稲田教授じゃないの」
え、という目をする瞳。
瞳よりも先に反応したのは、おしゃべりな真理子だった。
「え〜、あれが? 結構有名な? 助教授じゃなかったっけ? 若いけどスゴイらしいね」
麗華はそれに頷いて、瞳に質問しなおす。
「うん、その稲田助教授。ね、瞳、どうして稲田と知り合いなの」
「う・・・あの・・・・昨日、一緒にご飯を・・・」
ぼそぼそ、としゃべる瞳。喧騒で聞き取りにくい声だったが、麗華はちゃんと聞き取った。
「え、稲田先生とご飯? なんで?」
「・・・昨日・・・わたしがご飯をひっくり返して、それで、助けてくれて・・・・」
「・・・なーんだ、晩御飯じゃないのね」
瞳の口ぶりから学生食堂の昼ごはんであることを的確に読み取った麗華は、脱力したようにいった。
「稲田先生っていえば、まだ独身だよね。ね、結構いいと思わない?」
「え〜、まあ、うーん・・・アリかなあ」
「そうかな、どっちかっていうと経済の星野の方が愛嬌があると思うけどな」
「星野っ? アンタ、悪趣味ねえ・・・」
「でも星野って、ぽっちゃりしてて可愛いって感じじゃない?」
「アンタ変。星野って、鬼みたいに課題出すし、不可率50%超えてんのよ。おまけにあの体形だし」
「そこがいいんだと思うけどな」
「・・・・・・・」「・・・・・」「・・・・・・」
そこで話が一旦途切れたが、またしばらくして笑い声が起き、話がドンドン続いていく。
だが、瞳は今日もまた、話に参加せずに終わった。
昼休みが終わると、瞳は一般教養の授業に出た。
退屈だったが、まあそれはしょうがないだろう。・・・なにせ一般教養なのだから。
そして一般教養の授業から戻るとき、また稲田助教授に出くわした。
今度は、先に頭を下げた。
稲田先生は初め誰だかわからなかったらしいが、顔を上げた時点でようやく誰だかわかったらしい。
「君か。びっくりしたよ」
そう言って、屈託なく笑った。
「君、法学部じゃないよね、どこ?」
「け、・・・経済、です」
蚊のなくような声で、瞳は応える。
「・・・ごめん、もう一回」
「経済・・です」
「ふーん、経済か。・・・名前は?」
「・・・3回生の、山崎瞳といいます」
うつむいているので、よくきこえない。
「・・・ごめん、もう一回」
「3回の、山崎瞳です・・」
「うーん・・・あの、話をするときは、顔を見て話してくれないかな? 避けられてるみたいでちょっと寂しい」
そう言われたので、瞳はおずおずと顔を上げた。
・・・稲田先生は、わりあい整った顔立ちをしている。こんな顔なんだ、と瞳は思った。
「さ、もう一回、名前を教えて」
「3回生の、山崎瞳です・・」
「山崎さんか。うん。・・・また、食堂で会いましょう」
「は、はい・・・」
そう言うと、稲田先生は手を振って去っていった。
瞳は、さっき『食堂で会いましょう』と言われて返事ができたことに感動らしきものを覚えていた。
しかし、その後数日、タイミングが合わなかったのか瞳が稲田先生をみかけることはなかった。
稲田のことが気には掛かったが、あれきりのことだと思って、瞳はやがて気にとめなくなっていた。
居心地の悪いグループは、相変わらず瞳を放っておいておしゃべりに興じている。
自分が口下手なのはわかる。
普通の人より、おしゃべりが苦手なのも自覚している。
でも・・・グループのメンバーたちが、瞳がまったくそこにいないかのようにして目も合わせずに会話に興じているのは、あきらかに瞳を疎んじ始めた証拠だった。
瞳はいたたまれなくなって、用事がある、と呟き、その場を去った。授業はまだ残っていたが、どうでもよかった。
引き止める者は、いなかった。
外はひどい雨だった。
瞳は傘を差すと、歩き始めたが、風も雨も強い。
たちまち瞳は雨を受けて濡れてしまった。
・・・雨の冷たさ。
・・・そして、うまく行かない友達関係。
瞳は俯いて、独り歩き始めた。
次の授業まで、まだかなりある。
図書館にでも行こうか・・・そう思いながら、瞳は歩いていた。
そんな中で、出くわしたのはまた稲田先生だった。
「・・・おや、こんにちわ」
「・・・こんにちわ」
「少し今日は冷えるね」
「・・・・ええ」
二人はそのまま、しばらく立っていた。
「・・・ちょっと、お茶でもご馳走するよ」
助教授の部屋は、かなりの本で埋まっていた。
キョロキョロ、と本をみていた瞳は、コーヒーを出されて我に返った。
コーヒーを飲みながら、稲田は尋ねる。
「・・何か、あったのかい? 顔色が悪いが」
「・・・・・・」
図星だったが、瞳は黙っていた。
稲田も、それ以上は聞こうとしない。
二人は部屋の中で座っていた。
雨が降っているが、窓がないここでは雨の音がしない。
稲田は、どうしてここまで瞳を構うのか自分でもわからなかった。
中学生のような、なで肩の少女。
だが、なんというか、肩のラインを見ているとどうも抱きしめてやりたくなるような妖しい感覚を覚える。
そのせいで、こんなところまでこの生徒を連れてきてしまったのだが、いまさらどうしようもない。
瞳は、黙っていた。
稲田は、カップを置いた。
「何か、友達関係で悩みでもあるのかな」
「・・・・・・」
瞳は黙ったままだったが、濡れた目を上げた。
「・・・そうか」
稲田は目を閉じた。
「困ったことがあったら、またここにくるといい。相談に乗ってあげよう」
そう言って、自分のカップにコーヒーを継ぎ足す。
ふと、瞳を見ると、涙を流していた。
「・・・どうしたんだい?」
「・・・がと・・ござ・・・・」
「?」
「ありがと・・ございます・・・」
俯いたまま、なで肩を震わせていた。
「おい、大丈夫かい?」
稲田は、彼女の肩に手を置いた。
瞳は、稲田を見上げる。
その顔は、涙と鼻水でくちゃくちゃだった。
・・・だが、その瞳だけは、キラキラとしている。
止まらなくなった稲田は、そのまま瞳の唇を奪った。
「・・・ッ」
何が起こったのかわからないまま、瞳は口づけを受けた。
そのまま、机の上に横たえられ、胸を触れられる。
「・・・・・・!」
体が動かない。
「嫌なら・・・もっと泣いてほしい。今なら止められる」
「・・・・・・」
「いいんだね?」
稲田はそのまま胸を揉んだ。
瞳は、されるがままに胸を任せていた。
こんな場所で年上の男の人に胸をもまれるのは、いけないこと?
でも、逆らおうとは思えない。
わたしのこと、心配してくれた。
この人、悪い人じゃない。大事にしてくれる。
だったら・・・。
「! う・・・・ああ・・・・は・・・」
胸を直接愛撫された瞳は、妖しい声をあげはじめた。
ちゅうう、と稲田が胸を吸い上げる。
「はあああぁぁぁ」
稲田助教授の部屋に、女の悲鳴がこだました。
ショーツは左足にぶら下げられている。
稲田は、秘所に口づけ、中学生のような二十歳の女子生徒のエキスをすすっていた。
「ハアアアン、アン、アン」
瞳は、だらしなく脚を広げ、ただ声を喉から出し続けている。
「いやあ、あ、あ、あ、・・・ダメエ」
じゅるるるる。
「おと、いやああ」
ちゅる、ちゅる。
「ああああああん、やめ、やめて、あああ」
稲田は意地悪をするように、瞳の秘所をすすっていた。
やがて稲田は自分のズボンから赤黒いものを取り出し、瞳に当てた。
「・・・・!!」
その感覚で、一気に瞳は覚める。
「・・・・」
体中を緊張させる瞳を見て、稲田は瞳の経験が足りないことを知った。
だが、今更どうしようもない。
一気に、貫く。
「!!!!」
瞳の筋肉が、一気に硬直した。
「痛い・・・」
瞳は、一言だけしか言わなかったが、ガチガチになっている身体は、激痛を思わせるのに充分だった。
「すぐに・・・終わるから!」
稲田は短いピストンを繰り返し、快感を得た。
瞳はピストンのたび、傷口をえぐられ、あらたな涙を流した。
稲田のペニスは、手で絞られる以上の厳しい責めを受け、また生徒の処女を奪った罪悪感で一気に高まっていく。
一分もしないうちに、稲田はペニスを抜いた。
血と、反射的に出た愛液と、先走りの液が混じったものが、瞳の下の口から飛び出る。
そのまま稲田は手でペニスをしごいた。
精液は、稲田の左手に全て受け止められた。
「・・・なぜですか」
けだるく机に横たわったまま、瞳は稲田に尋ねた。
「・・・すまない。僕が、そうしたくなったからだ。君の顔を見て、我慢できなかった」
「・・・そう、ですか・・・」
瞳はゆっくりと身体を動かし、自分自身を拭いて、着衣を直した。
「君は・・・僕を怒ってないのか?」
そう訊くと、瞳は首をかしげた。
「・・・・別に」
「・・・・そうか」
瞳はそれで、部屋を出て行った。
後には、情事の後の匂いだけが残っている。
稲田助教授は、自分のしたことがどういうことなのかを思い、途方に暮れていた。
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