僕は未だに神足さんに好きだと言えずにいる。
あの日、家には何とか言い訳をしておいた。
その言い訳とは、
「友達の家に泊まってたんだ」
という陳腐なもの。
・・・間違いではないが、嘘に近い。
第一に、神足さんと僕はなんとなく仲良くしているつもりだけど、友達なのかどうかがよくわからない。
神足さんは未だに二人きりでないときは、誰とも話をしない。もちろん、僕ともだ。
そういう意味では、友達というほど仲がいいともいえないだろう。・・・二人でいるときは、さすがに少し口を開くこともあるけれど。
ただ、僕らは一緒にいてもいっしょにいるだけで何もしていないことが多い。最近は、学校帰りに彼女の家でお茶を飲んで帰ったりすることもあるけど、それ以上でも以下でもない。休日にデートすることもない。
僕と神足さんは、他人なのか、友達なのか、・・・恋人同士なのか、よくわからない関係だった。
第二に、神足さんは女の子だ。・・・『友達の家』といえば、ふつう男同士のことを指すだろう。黙って勘違いさせているのは嘘をついているのに近い。
だけど、本当のことを言うのも面倒なので、僕はそれで押し通した。
母さんからは、事前連絡をするようにきつく言われただけで済んだ。
いま、僕らのクラスは理科室で実験をしている。
僕と神足さんは、席順の関係で同じ班になった。同じ班といっても、他の人もいるし、授業中なので彼女の態度はそっけない。
その態度は、二人きりのときとは大きなギャップがある。
・・・どうしてここまで印象が違うのかな。
神足さんが人付き合いに不器用だというのはわかる。それが、あの耳のことがあるからだということもわかる。
でも、彼女ほど頭がいい人なら、もっとうまく人と付き合えないはずがないと思うのだ。そこがわからない。
神足さんほど綺麗な子なら、あれほど綺麗に微笑むことができるなら、男女問わずいくらでも友達ができるはずなのに・・・。
そんなことを考えていると、僕は無意識のうちに彼女の顔をみつめてしまっていたようだ。気がつけば、神足さんに軽く睨まれていた。
「・・・きちんとして」
「ハイ」
僕は記録をつけるのを彼女任せにしていたらしく、控えめに抗議された。
普段人前で喋らない彼女にしては、珍しい。
僕は真面目に実験に参加した。
放課後、中庭に行ってみると、神足さんは僕に背を向けて猫にえさをやっていた。
彼女は、僕の方を見ようともしない。
「・・・来たわね、不真面目クン」
背中越しにそう言っただけだった。
「授業中に人の顔をじっと見るなんて、失礼じゃない?」
「え、うーん、そうかな」
「それに恥ずかしいじゃない」
「そ、そうだね」
神足さんは僕に背中を見せたまま。
ブレザーの清潔な制服は、彼女の艶やかな髪に彩られている。
僕は彼女の横に立って、耳がある場所をじっと見つめた。
長い髪が耳を隠しているが、よくよくみれば、尖った耳の形が見えないこともない。
僕だけが知っている、彼女の秘密。
「・・・またじっとみてる」
彼女はジロリと僕を見た。
「今はいいでしょ」
そう答えたが、彼女は面倒そうに首を振った。
「あら、学校よ・・・妙な噂立てられたら、困るんじゃないの? さっそく今日だって、なんかあの二人いい感じとか、話してた人がいたわよ」
彼女は自慢の耳で、何かを聞いていたらしい。
教室内で、彼女に聴こえない音はない。隣のクラスの声も聴こえたりするらしい。
しかも彼女は、聖徳太子よろしく、複数の声を同時に聞き分けることができるらしい。
そのせいか、いろいろと話を聞いてしまうことがあるそうだ。
今ではたまに、僕と彼女のことは噂に上ってくるらしい。
休み時間や、朝のちょっとした時間、人が少ないときに挨拶したりするくらいなのに、よくまあそれで噂を立てるものだと感心してしまう。
だが、彼女も僕もそれほどその噂を不快には思っていない。
僕が普通のクラスメイトより神足さんと仲がいいのは確かだし、・・・『沈黙の魔女』というあだ名に代表される、彼女が冷たすぎるという悪評が薄れているのではないかとも思うからだ。
そんなことを思いながら、僕は彼女に言い返す。
「神足さんだって、笑ってるじゃない」
彼女はおかしそうに笑う。
「あら、学校じゃわたしは笑っちゃいけないとかいう決まりでもあるの?」
「そんなことは、ないけどさ」
あんまり他の男子がいるところで、あの顔で笑わないでほしい。それが本音だけど、まさかそんなことはいえない。
僕らはそれから、しばらく黙っていた。
僕は、彼女の横に立ち、彼女の耳の辺りをじっとみていた。
髪に隠れて見えない耳を、透視するように。
神足さんも僕の視線に気づいたらしく、いぶかしげに僕を見上げた。
「・・・さっきから、わたしの耳を見てるの?」
「・・・ばれてた?」
「わかるわよ、それくらい。・・・ひょっとして、触りたい?」
「いいの?」
そんな気はなかったのだが、僕はそう言ってみた。
彼女は眼を細めたが、断ったりはしなかった。
「・・・耳が見えないように髪をかけたままで、軽く触るならいいわよ。あなたに触られると腰が抜けちゃうから」
「それ、褒めてる?」
僕が聞き返すと、彼女は赤い顔で僕を見上げて睨んだ。
「・・・ただ、本当のことを言っただけよ」
「神足さん、照れてる」
ふん、と彼女はそっぽを向いた。
僕は彼女の綺麗な髪をひとふさ掻き分け、彼女の耳をそっと握った。
「あっ・・・!」
彼女が小声をあげた。
彼女の足元の猫もビックリして彼女を見ている。
・・・この耳だ。
髪も綺麗だけど、この耳が一番彼女を感じる。
ずっと触りたくて、たまらなかった。僕はしっかりと指に耳を感じていた。
軽く触るくらい、といわれたけど、僕は言いつけを破ってじっくりと耳をなぞり始める。
もちろん、神足さんは動けなくなってしまう。
「っ! っ!!」
ビク、ビク、と彼女は身体をひくつかせた。
やめて、というように彼女は僕を見ている。
でも、そんな目をされると、余計に触りたくなる。
やがて、僕がいつまでたっても耳を触るのを止めないのを知ると、彼女は口元に手をやった。
「・・・っっ!、 っつ!」
声が漏れそうになっているので、彼女は必死に我慢している。
僕は最後に、そっと耳の穴に小指を差し入れた。
「ああっっ!!!」
神足さんはそのまま、片膝を突いてしまった。
「ひどいじゃない・・・」
彼女は恨めしそうに僕を見ている。
「ごめん、つい、触れるのが嬉しくて」
「だからって・・・何も、あそこまで」
と言いながら、彼女は真っ赤になった。
その日の彼女は恥ずかしがっているのか機嫌が悪いのか、帰る途中も一言も口をきいてくれずに、さっさとマンションの奥に引っ込んでしまった。
僕が彼女に告白したのは、さらに数日してからのことだ。
コクるなんていうのは、経験がある人ならわかると思うけど、並大抵の勇気じゃできない。
中には誰にでも好きだといえる『軽薄な』人もいるらしいけど、それだって凄いと思う。独り言でも、誰かに好きだというつもりで練習をしてみたら、恥ずかしくて言えない人が多いと思うし。
情けない話、僕はいろいろと理由をつけて告白を先延ばしにしていた。
やれ今日は雨が降っている、やれ今日は暑くて彼女の機嫌が悪そうだ。
彼女が一言も話してくれなかった、彼女が笑っていない日だ、彼女の機嫌がよすぎて怖い・・・馬鹿馬鹿しい理由だけど、全部告白を取りやめた理由のひとつだ。
いつまでたっても、これじゃ告白できない。
告白する日の前日、僕は彼女に用があるから明日の放課後に話すとわざわざメールを打った。
5、6分で彼女は「いいよ」とだけ返事を打ってきた。
・・・ちなみに、メールを打ったのは、メルアドを交換したとき以来だった。
その日、僕は朝から緊張していた。
中庭で彼女を見たときは、もっと緊張していた。
今日は、彼女に好きだというつもり。
彼女は・・・僕が好きなんだろうか。僕の告白にどう応えてくれるんだろうか。
悪い結果が出るくらいなら、黙っておいた方がいい。
彼女が笑うたびに、この笑顔をずっとみていたい、告白なんかしなくてもいいじゃないか、そう思ってしまう自分がいた。
『用事がある』なんていっておいて情けないけど、それが僕の本心だった。
彼女は猫と僕とを交互に見ていた。
猫は考え事をしている僕を見つめていた。神足さんは、猫を丁寧に撫でていた。猫をなでるのは、コツがいる。下手な撫で方をすると、逃げられたり引っかかれてしまうのだ。その点、神足さんは猫の扱いがうまかった。
彼女はしばらく猫をなでていたが、猫の方が少し嫌そうなそぶりを見せたので、手を置いた。
そして、僕の眼を真っ直ぐ見つめてくる。
2つの黒い眼が、僕を捉えた。
・・・この眼も、僕にとっては彼女の耳と同じくらい神秘的だ。この眼で見つめられると、動けなくなってしまう。
神足さんは、口を開いた。
「何か、用事なんでしょ?」
「・・・うん」
「何?」
彼女は小首をかしげた。
いま、このときにそんな可愛いしぐさをしないで欲しいな、と思いながら僕は必死に言った。
「好きなんだ・・・付き合って欲しいんだ」
彼女は横を向いて、少し考えた。
そして口を開いた。
「わたし・・・あなたを好きなのかどうか、自分でもわからない」
彼女はそう言った。
僕が少し残念そうな顔をしたのがわかったのだろう。彼女はこう付け足した。
「こういうの、苦手だから・・・ごめんなさい」
「ううん、いいよ気にしないで」
・・・いつからか、友達の話を聞いて思っていた。
お互いフリーだ、と確認しあえば付き合い始めることになる、それが恋愛だという風に。
でも、恋愛なんてそんな甘いものじゃない。
フリー同士でも、こんなに恋愛って苦労するんだよな・・・。
神足さんがよい返事をくれなかったことで、僕は少なからずショックを受けた。
それでも、神足さんと僕は、いつもどおり静かに中庭で一緒に過ごしていた。
僕たちはそれから二人で一緒に帰った。
でも、彼女は目を合わせてくれない。無表情に近い顔をしたまま、歩いていくだけだ。
お互いに、一言の声も掛け合わない。
僕は、前を向いたまま、彼女に話しかけた。
「神足さんってさ、いままで、誰からも告白されたことないの?」
「・・・何度か、あるわ」
「全部、断ったの?」
「・・・うん」
彼女も僕と同様、前を向いたまま僕の質問に答えていた。
「どうして断ったの?」
僕がそう聞くと、彼女は初めてそこで僕の方に向き直った。
「だって・・・話もしたことないのに告白してくるのよ。それに、断ったら悔しそうにするだけなんだし。本当に、わたしのこと好きだったのかなって思う」
「・・・僕もちょっと、悔しかったけどな」
僕も彼女の顔をみつめながら、意地悪をいってみた。
神足さんは、眼を伏せた。
「・・・ごめんなさい。でも、仲良くなってから告白されるのなんて、初めてだったから、わからないの」
彼女と僕は、彼女の家までそれきり何も話さずに歩いた。
そこで、さよならを言って別れた。
神足さんは人前でも僕を意識し始めた。
人前では決してはっきりと顔色を見せなかった彼女。
その彼女が、朝でも授業中でも、僕をみつめていることがときどきあった。
・・・見つめられている当の本人である僕でさえ、彼女に多少でも意識されていると感じていたほどだ。
なんというか、女子たちはここぞとばかり噂話をしていたらしい。
彼女に聴こえないようにしていたらしいが、教室内で話をする限り耳のよすぎる彼女に聴こえないわけがない。
一度など、女子たちのヒソヒソ話を聞いていた彼女が動揺のあまり机の脚に思いっきり足の小指をぶつけたほどだ。
・・・さすがにその場では女子たちも黙ってしまったらしいが、噂は止まらなかった。
なお悪いことに、何人かの生徒に僕らがいつも中庭にいることや、一緒に帰っていることがばれてしまっていたらしい。
もちろん、そこで彼女が綺麗な笑顔を見せていることも。
いまや、僕たち二人は勝手に公然の関係になりつつあった。
告白してから一週間。彼女は、そんな噂が立っていても変わらずに毎日僕と一緒に帰っていた。
いろんな意味で、複雑な心境だった。
そして今日も彼女のマンションの前までやってきた。
今日も、さよならだけでお別れかと思った。
でも、その日彼女は恥ずかしそうに声をかけてきた。
「寄って・・・いかない・・・?」
もじもじしながら、彼女は僕を誘った。
自分の部屋に入ると、彼女は髪をあげて、尖った耳を出した。
自分の家では、こうしておくのが習慣のようだ。
僕は久しぶりに尖った耳を直にみて、なんだか愛しくなった。
彼女は着替えてくるといってTシャツにジーンズというラフな格好になり(それでも綺麗だった)、いつものように紅茶を淹れて、僕にすすめた。
今日は僕らはリビングにいて、彼女は僕と同じ側のソファに座った。
そうしながら、彼女はため息をついた。
「・・・返事、保留するんじゃなかったわ」
そう彼女は言った。
「あれから、あなたに他の女の子が近づいただけで胸が苦しくなる。話をしてたりするだけで、胸が痛くなる。
でも、あなたを見ると嬉しくなる。声を聞くと、身体が震える」
彼女は胸を押さえながら、僕に話し続ける。
「ちゃんとつきあえば、こんな気分にならないのかな・・・?」
胸を押さえたまま、神足さんは呟いた。
彼女は赤い顔をしたまま、うっとりとした表情になっていた。
耳が、垂れ下がって赤くなっている。
そうっと手を伸ばして、その耳に触れた。
彼女は眼を閉じて息を吐いただけで、全く抵抗しない。
やがて彼女は細眼を開き、僕をみつめてくる。
彼女しか見えない。
彼女しか・・・。
両手で耳と頬を押さえ、僕の顔を近づけていく。
彼女はされるがままになり、眼を閉じていた。
そして僕は、柔らかい彼女の唇を自分の唇に重ねた。
唇を離し、手の力を少し抜くと、僕は自分が夢中になってキスしていたことに気づいた。
うわわわわ、・・・ファーストキス、しちゃってた。
彼女はといえば、トローンとした目で呆けてしまっていた。
そんな無防備な表情に誘われて、僕は彼女の肩をそっと抱き寄せ、手を握った。
そしてソファにゆっくりと、彼女を押し倒していく。
「ここじゃ・・・いや」
彼女はそう言った。
神足さんは電気を消し、カーテンを閉めた部屋で服を脱いだ。
僕も、同じようにした。
ベッドに彼女を横たえると、彼女はむしろ積極的に僕を抱きしめた。
僕は手に収まりきらないような彼女の胸に手をかぶせた。やん、と彼女は悲鳴を上げた。
左手で耳を触りながら、右手で胸を撫でてあげる。胸の弾力は、決して僕の身体にはないものだ。
「はっ、あああ、あああ・・・・あ、ああああ」
彼女は愛撫で声をあげた。
「こえ、でちゃう、いや・・・・」
神足さんはいつかのように口に手をやって、声を我慢しようとした。
「神足さん、声、聞かせて」
「いや、恥ずかしい・・・」
僕はキスをしてから、耳にキスをした。
「ひんっ!!」
彼女は声をこらえるのも忘れて叫んだ。
「みみ、だめえ・・・」
「耳、気持ちいいんでしょ」
「耳触られたら、感じちゃう」
「知ってる」
僕は、耳を撫でながら、胸の頂を下り、縦長の臍を降りた。ゾクゾクするのか、彼女はお腹を振るわせた。
「スタイル、いいんだ」
暗いのでわかりづらいが、服の上からの予想通り彼女は引き締まっていた。
「・・・わかんない」
神足さんは、首を振った。
実は彼女は、身長が高い。
僕と同じくらいの身長だ。だから、並んで立つと視線が合う。
けれど、腰の位置は彼女の方が高い。
それだけ脚が長いということになる。
なんだか悔しいけど、そのときの僕はただ彼女の身体の線に感動していた。
そんな彼女の脚に、僕は初めて直に触れた。
「・・・・ッ、ア・・・」
普段履いているプリーツスカートでもなく、普段着のジーンズでもない、素の脚。
滑らかで、気持ちがいい。
「やああ・・・」
恥ずかしげな声をあげているのがわかるけど、僕は止まらない。
ただ、彼女の身体を触って、喜んでいるだけだ。
神足さんも僕も、お互いに初めて。だから・・・よくわからないけど、でも、きっと嫌じゃない。
僕は彼女の様子をうかがいながら、彼女に触れていた。
そして、僕ははやる気持ちを抑えながら、コンドームをつけて神足さんのアソコに自分自身をあてがった。
・・・なんでその場にコンドームがあったのかって? それはあんまり聞かないで欲しい。彼女の部屋に出入りしはじめてから、こっそりと買いに行って財布に忍ばせてあったのだ。
こんなことを書くと、僕に随分下心があったみたいに聞こえるだろう。・・・正直言って、そのとおりだ。
コンドームをつけなければいけないことを思い出したのは、挿入直前だ。
慌てて手探りで鞄から財布を出して、コンドームを出し、取り付けるのを彼女は何ともいえない目で見ていたと思う。
・・・恥ずかしくてしょうがなかった。
つけるのも恥ずかしいんだけど、そんなものを事前に用意していたことを彼女に知られるのが恥ずかしかった。
彼女は今日に至るまでこの件については触れていないけど、いずれ聞かないといけないかもしれない。
そして、コンドームをつけて、挿入する段になって。
彼女は、身体を堅くしていた。
「優しく・・・して」
震える声で、彼女は言った。
「うん・・・」
自信もないくせに、僕は言った。
挿入する場所は、自分ではわからなかった。暗いし、初めてだから当然かもしれないけれど。
焦り始めた僕に、彼女は手を添えて案内した。
・・・初めてで痛いことしか待っていないはずなのに、そんなことをしてくれた神足さんは凄いと思う。
でも、手を添えられて、グッと入ったそのとき、僕はただ感動しているだけだった。
「あああ!」
「・・・・ッッ!!」
気持ちよさそうな声をあげたのは僕で、痛いと叫びそうになったのは彼女だ。
首を横に向けて、肘を曲げて、激痛に耐えている神足さん。
でも、まだちょっとしか入っていない。
僕がもっと押し込むと、彼女はさらに痛そうにした。
でも・・・申し訳ないけど、気持ちよすぎる。
僕はそのまま、3回ほど腰を動かすと、彼女にしがみついて一気に射精してしまった・・・。
挿入してから、射精するまでは、僕はほとんど無意識に気持ちよい動きをしていただけだった。
でもそれは、彼女にとっては激痛を伴うだけの行為だったらしく、僕が彼女の中で果てた後も神足さんはグッタリとしていた。
股間からは、赤い血が流れている。
・・・鮮血はシーツに染みになってしまうほど流れていたが、それはしょうがないだろう。
僕はコンドームを処理して、グッタリして脂汗まで流している彼女をティッシュとタオルで拭いてあげて、そのまま彼女の横についていてあげた。
短時間で疲れてしまった神足さんは、寝息を立て始めている。
その顔を見ていると、僕も何だか眠くなってくる。・・・それにしても、神足さんって幸せそうに眠るよね。
そんなことを考えているうち、例によって僕はまた彼女のベッドで眠ってしまっていた。
「ねえ、起きて・・・」
「ん・・・」
「もう帰らないとダメよ、外、もう暗いわよ!」
「ん・・・?」
夜7時になって、彼女は眼を覚ましたらしい。
裸の自分に慌てて、隣に裸の僕がいることにもっと慌てたという彼女は、ようやく自分が初体験の後そのまま眠ってしまったことに気づいて、着替えた後に僕を起こしたというわけだった。
僕もようやくそこまで頭がまわり、慌てて起き上がったが、
「服、着てよ!!」
という彼女の叫び声に押されて、服を着てから彼女の家を出た。
彼女の家を出るとき、彼女も僕も寂しそうだった。
何というか、もっと一緒にいたかったのだ。
でも、ちょっと前に無断外泊した身としては、あまり外泊するのはよくない。
(それに、コンドームは一個しかなかった)
「じゃあ、また明日・・・さよなら」
「・・・さようなら」
神足さんにしては本当に珍しく、蚊の鳴くような声で僕を見送った。
こうして、半分勢いで初体験を終えてしまった僕たち。
この後、神足さんは「ちゃんとわたしから好きだって言えてないから!」という理由で、僕をデートに誘ったりしてくるんだけど・・・それはまた、別の話。
続編、雷 - 耳4はこちら。
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