放課後の教室には、二人の生徒だけが残っていた。
かたや、女子生徒。メガネでショートカット、痩せて背の低い真面目そうな女子生徒。
かたや、男子生徒。背は高く、爽やかな印象を与える目鼻立ちで、身体もがっしりしてきている男子生徒。
・・・女子生徒は、男子生徒を呼び出して、たった今告白したところだった。
だが、その返事は、
「ゴメン・・・山内さんとはつきあえない、他に付き合ってる子がいるし」
というものだった。
山内といわれた女子生徒は、みるみる目に涙を溜めていく。
・・・男子生徒は一瞬面倒そうな、戸惑ったような表情をみせたが、とりあえず謝った。
それでも涙が溢れていくのを止められない女子生徒は、ポロポロと涙を流していく。
結局、男子生徒は女子生徒を無視して帰ってしまった。
山内富貴子。
3年1組の学級委員長を務める彼女は、小さい頃から真面目だった。
親や先生のいうことを素直に信じてがんばる姿は、「委員長」とか「優等生」とかいう言葉が似合っていた。そういう姿に、少なくとも、年配の層からは好感を持たれていた。
だが、同級生からは、要するに潤いがないというか詰まらないというか、そういう目でみられていたのはたしかだ。
それとは別に、問題もあった。
富貴子は、自分にどうにもならないことがあると、ときどきムキになって怒り、ヒステリックに叫んだり同級生を叩いたりすることがあった。
どこか、危うい。
親身になって客観的に富貴子を評価する人間なら、その危険性を見抜いただろう。だが、不幸なことに、親も先生も富貴子の上っ面の優等生振りしかみえていないところがあった。
本人は中学生になって、ホンのわずかだが自分のおかしな面を自覚していた。だが、中学生程度の自制心では、それを抑えきることは困難だった。
さて、中学生にもなれば、真面目な少女でも恋くらいする。親たちには意外だったかもしれないが、富貴子にとっては当然だった。
富貴子の初恋の相手は、サッカー部に入っていた男子生徒、森川信二だった。
生来優しいタイプだった森川は、思春期に入ってもそれなりに女子生徒に気を遣うことができた。そして、ルックスがよく、スポーツマンタイプだということもあって中学の女子生徒たちにはとても人気があった。
富貴子もその例外ではなく、自分にないものを持っている森川に強い憧れを持っていた。
そして、今日に至ったわけだが・・・結果は先ほどのとおり。
森川が気まずそうに立ち去った後も、富貴子は動けずにいた。
泣きはらした彼女が女子トイレで顔を洗い、暗くなった外をポツポツと歩いて家に帰ったのは、すでに7時を回ってのことだった。
家で待っていた富貴子の母親は、「さしたる理由もなく」帰るのが遅れてきて塾までサボってきた(実際は完全に忘れていた)娘にしかめ面をしてみせたが、富貴子の目にはそんな顔は入らない。
富貴子は電気を消し、制服のまま天井を見上げて、また泣いていた。
端的にいって、富貴子は、現実を受け止められずにいたのだ。
どうやって家に帰ってきたのかもうまく思い出せない富貴子は、自問していた。なぜ、振られたのかということを。
いや、正確に言うなら、自分が振られたわけではないと思い込もうとしていた。
『つきあえない、他に付き合っている子がいる』
・・・それは、森川を取り巻く女子たちなら誰でも知っていることだったが、森川にのぼせ上がっていた富貴子は、そんな基本的な事実さえ知らなかった。
というより、富貴子は、森川を好きなのは自分だけで、森川はフリーだと堅く信じ込んでいたのだ。
あまり恋愛話に顔を出さなかったことのツケだったかもしれない。
マジメと思われていた富貴子の前では、友達もそういうことを話してはくれなかったということもある。
電気もつけずに、勉強机で目を光らせていた富貴子は、やがて暗い顔を伏せ、呪文のように心の中で唱え続けた。
『自分が振られたわけではない』
『自分が振られたわけではない』
『自分が振られたわけではない』
『自分が振られたわけではない』
・・・・・・
そう思い続けた富貴子は、森川の態度を相当に自分勝手に解釈していった。
やがて、富貴子は自分の中で納得のいく答えをみつけたのだった・・・。
次の日。
森川は、山内が無気味なほど笑顔なのに気づいた。
目が合えば、笑顔さえ返してくる。
・・・いったい、何があったのか。
不審には思ったが、恨まれるよりはましだったのでホッとしていた。
だが、それもつかの間のこと。
数日後、再び森川は富貴子と会っていた。
「森川君、わたしのこと、うまく断ろうと思って、付き合っている人がいるなんていったんでしょ?」
「・・・ハ?」
「わたし、だまされないから。・・・付き合っている人なんて、いないんでしょ。わたしとつきあって」
「え、いや、ホントに付き合ってる子がいるんだってば」
「いやよ。わたし、騙されないから」
「・・・弱ったな」
富貴子がすがりついた『妄想』、『幻覚』。それは、『森川は嘘をついている』と思い込むことだった。
森川は、自分を振るためにわざと「付き合っている人がいる」などと嘘をついた。富貴子は、自分にそう思いこませることに成功していた。
奇妙なことに・・・、富貴子は森川を慕い始めたときから、森川を好きなのは、自分くらいなものだと何故か信じ込んでいた。
告白したときも、断られるなどとはこれっぽっちも考えていなかったのだ。
だからこそ、富貴子は考えた。
森川は『フリー』なのに、自分を振った。
だから、都合よく自分を振るために、付き合っている人がいるなどと嘘をついたと。
一方の森川は、困惑していた。
森川には、1年生のときからの彼女がいる。
もうキスもエッチも済ませた関係で、落ち着いてきたよい関係だ。
学校中の人間が、それを知っていると思っていたのに、なぜこんなことをいわれるのか。
「・・・いい加減にしてくれよ。山内さんらしくない。もっと、賢くて聞き分けのある人だと思ってたよ」
富貴子がよく光るどこか恐ろしい目でみつめてくるなか、森川はそんな言葉を投げつけて走り去った。
あとに残された富貴子の目は、しばらく呆けていたが、やがて昏く澱みはじめたのだった・・・。
数日後、森川の上靴がなくなっていた。それは溝の中に捨てられており、汚れた状態になっていたのをクラスメイトが発見した。
その数日後、森川の教科書が破られていた。
さらにその数日後には、森川の鞄が運動場のど真ん中に放り出されていた。
クラス中どころか、学年中がこの「いじめ」に驚いていた。
森川は、いじめを受けるようなタイプではなかったし、人に恨みを買うタイプでもなかったからだ。
この一連の事件は学年集会まで開かれる大きな騒ぎに発展したが、結局犯人不明のまま、今後はそうしたことがないようにしようという詰まらない結論を出して終わった。
だれも、学年の成績が高順位で学級委員長の山内富貴子を疑わなかった。
だが、森川にはなんとなくわかっていた。
これが、富貴子のしたことであると・・・。
その後、森川は富貴子を呼び出した。
厳しい表情だった。
「山内さん・・・俺の上靴や教科書、鞄にあんなことをしたのは、・・・山内さんでしょ?」
真面目に森川は質問したのだが、富貴子は嬉しそうに頷いた。
「そうよ」
「・・・なんであんなことを。僕への恨み?」
「まさか。あなたが素直になってくれないから、ちょっと気を惹こうと思って。わかってくれたんだ、嬉しいわ」
状況を分かっているのかいないのか。不思議なほど富貴子の顔は笑っていた。
一方の森川の顔は、強く引きつり始めていた。
「冗談じゃない・・・止めてよ、いまなら誰にも言わないから」
「・・・何よ。まだ、付き合ってくれる気にならないの? 森川君フリーなんでしょ、つきあってよ」
「僕には彼女がいるんだよ。・・・山内さんとは付き合えない」
「嘘つかないでよ。わかってるのよ」
「・・・いい加減、目を覚ませよ」
ついに言葉遣いが乱暴になり始めた森川だった。
「どうしても、わたしとつきあってくれないのね」
富貴子は首を振った。
「君とは付き合えない。最初から、そう言ってただろう」
嫌悪感も露わに、森川は言い放つ。
しかし、それは、富貴子を諦めさせるどころか、新たな行動に移させるだけだった。
「そう・・・じゃあ、これからあなたをわたしのものにするわ」
そういうと、富貴子はいきなり森川を抱きすくめ、唇を奪った。
・・・富貴子のファーストキスだった。
いきなり、彼女でもない女にキスをされた森川は、怒った。
「何するんだ!」
森川は男の力で富貴子を突き飛ばした。富貴子は、机にぶつかり、ふらついた。
動きが明らかに緩慢になった富貴子は、ゆらり、と立ち上がり、森川をみつめた。
・・・髪を振り乱した向こうから覗くのは、恐ろしい目つきだった。
その目に睨まれると、森川は、自分が富貴子に殺されるのではないかという考えにとらわれて、身体が堅くなった。
富貴子は、ゆっくりと森川に歩み寄ってくる。
ふらつく足元は、しかし、確実に森川を目指している。
そして、富貴子はのそり、と白く細い腕を森川に伸ばした。
・・・殺される!
だが、富貴子がしたことは、森川を抱きしめ、ゆっくりと押し倒すという作業だった。
森川を押し倒すと、富貴子は、自分のスカートを脱ぎ、ショーツを脱いでいった。
そこまできても、恐怖で頭が回らない森川には、自分の見ていることが何を意味しているのかが理解できない。
やがて富貴子が、森川の下半身のベルトに手をかけたとき、ようやく森川は自分の身の危険を知った。
「お前、何するんだ!」
「何って・・・セックスに決まってるじゃない」
「ちょ、・・・なにを・・・」
富貴子は、森川に体重をかけ、覆いかぶさる。
二度目の、キス。
唇が離れたとき、富貴子は、学生ズボンをずらし、トランクスまでも脱がせていった。
「これから、わたし、森川君に犯してもらうの。本当に、わたし、森川君のものになるの。そして、森川君はわたしのものになる。・・・素敵でしょう?」
「お、おい、・・・じょ、冗談だろ?」
「ここまできて、何をいうの?」
露わになったペニスを、富貴子の細い指がきゅっと握る。
「・・・お、お・・・・」
森川のペニスは恐怖で萎んでいたかのようだった。
だが、富貴子に押し倒され、白い脛が自分の視界をちらつき、白く甘い匂いを漂わせる制服が視界をちらつくだけで、森川のペニスは固く勃起していく・・・。
中学生の男子など、性欲を刺激すれば抵抗できない。
固くなったペニスを、富貴子はガッチリと掴んだ。
痛いほどにペニスを握られても、森川は、自分の彼女とは違うペニスの扱いに、かえって新鮮味を感じてしまっていたほどだった。
奪う側に立っている富貴子は、自分の中に入れるほどに勃起したペニスを確認すると、ゆっくりとその上にまたがっていく。
「さ、いれるわ・・・」
富貴子は、下半身をむき出しにした森川と繋がろうとしてた。
当然、富貴子は処女。
これからのことがハッキリ思い描けるほどの経験もない。
・・・富貴子の秘芯は、あまり潤ってもいなかった。
だが、富貴子の心は、森川と繋がることだけだった。
わずかに濡れてさえいるペニスの先が、富貴子の秘芯とキスをし、そして中に侵入していく。
やがて、富貴子は自分自身の意思で、自らの処女膜を破った。
「グ・・・ガア・・・ア・・・ヒギ」
乾き気味の肉襞は、激しい抵抗を見せたが、富貴子は何とか森川を胎内に納め、処女を捧げた。
対する森川は、自分の腹上で起こっている出来事にまるでついてきていない。
自分のペニスが、自分の彼女を裏切り、生真面目で通っているクラスの委員長の処女を散らしてしまっていることに実感が湧いていない。
富貴子はしばらく痛みに悶絶していたが、やがて、富貴子の身体は防御本能を働かせ、愛液を分泌し始める。
富貴子はそれにあわせ、森川の上で腰を振った。
激痛が走るにもかかわらず、引きつった笑顔を浮かべ、男の上で踊り続ける処女。
処女である自分が、森川を押し倒し、無理矢理に森川の女になろうとしている・・・。
自分は狂っている・・・。富貴子自身の一部も、それを感じていた。
だが、そう思うのは富貴子の中のわずかな一部だけだった。
富貴子の中の大部分は・・・恋い慕っていた森川が侵入している事実、森川とつながっている事実に狂喜しているのだった!
富貴子の肉体からも愛液が分泌され、膣が潤い始めたことで、腰がある程度滑らかに動き始めた。
そのうえ、富貴子と違って性体験がある森川は、無意識のうちに下から女を突き上げてしまう。
富貴子の腰と森川の腰は、奇妙に相性よく動いていた。
それが、富貴子と森川を激しく興奮させていた。
「ああ・・・もりかわくん・・・わたしを、わたしがほしいのねえ・・」
ネットリとした声をあげる富貴子に、森川はさらに興奮した。
富貴子は、森川の上に手をつき、痛みをこらえて腰を振る。
・・・森川は、自分の彼女と違い積極的に動く富貴子を感じ、・・・セックスの相性はあきらかに彼女よりも富貴子のほうがいいのだということを感じ始めてしまっていた。
そんな背徳的な思考がよぎった瞬間、ますます森川のペニスは膨れ上がっていく。
「やん・・・また、大きくっ!」
痛みから、悲鳴を上げる富貴子。
富貴子の身体は、やはりこの性交からなんの快感も得られていない。
ただ、精神が熱く震えて、快感を富貴子に与えているだけだった。
だが、森川のペニスは富貴子の膣に翻弄され、肉体的な快楽に支配されていた。
森川の腰や脚は強張り始め、いよいよ射精の準備にかかっていた。
森川はこの交わりに夢中になり始めていた。
ときどき漏れる富貴子の悲鳴さえも、・・・嬌声のようにきこえる。
普段、自分とセックスしている彼女は、セックスの最中もあまり声をあげない。やや淡白なタイプだった。
だが、この・・・自分を好きだと言い張る女は、なんて積極的で・・・。
そんな比較をしてしまいながら、森川は、ついに富貴子の腰を掴み、下から大きく突き上げ始めた。
「ひぎ、ぎゃああ、あ、あああ、い、いたいよ、ああ、もりかわくん、あああん、いたい、いたい、あああがが!!」
富貴子は腰をつかまれ、勝手に動き始める森川に悲鳴を上げる。
だが、森川はもう止まらない。
ただ、ひたすらこの処女の中に射精して、自分の証を胎内に吐き出そうとしているだけだった。
最後の瞬間、森川は、
「ああああ・・・でるう!!」
と、彼女にするのと同じように絶頂を宣言する。
同時に、遠慮なく富貴子の子宮に白濁を浴びせかけた。
「いやぁ! これ、ひぎゃ、ああ!!」
胎内に精液を受けた富貴子は、最後の突きで痛さのあまり絶叫した。
その後、2度、3度と森川が痙攣するように腰を震わせ、全部の精液を富貴子に与えていく・・・。
その動きから、富貴子は自分の望みがかなったことを悟った。
富貴子は、思いどおりに森川の精液を一番奥に浴びることができたが、セックスがこれほどに痛く辛いものだとは思っていなかったのか、そのままグッタリと崩れてしまっていた。
これで・・・この人は、わたしのもの・・・。
富貴子は最後にそう思いながら、意識を手放していった。
感想・誤字等はこちらまで。
| <BACK | 官能小説 佳情 | NEXT> |