僕には女友達がいた。
クラス替えで一緒になって、たまたま話をしてから仲良くなった女の子。
伊藤さん。伊藤美鈴さん。
初めはただの友達だと思ってたんだけど、伊藤さんはとっても可愛くて、僕はあっという間に彼女のことが好きになってしまった。
でも、彼女は僕のことを恋愛対象としてみていないみたい。
それでも、いつかは恋人同士になりたいな・・・と僕は淡い願望を持っていた。
でも、僕がぼやぼやしているうちに、彼女は先に自分で恋人を作っちゃったんだ。
その悪夢のような日は、唐突にやってきた。
その日の放課後だったと思う。僕は伊藤さんの親友だという三枝さんと少し話をしていた。
そんなとき、伊藤さんがうきうきしながら歩いてきて言ったのだ。
「藤原君(僕)にユッキー(三枝さんのこと)! うっふっふ、いいお知らせがありまーす!」
あまりにも嬉しそうな伊藤さんの様子に、僕も嬉しくなった。
「なーんと! 伊藤美鈴、初めて彼氏ができたのでーす! 告白、OKもらっちゃった!」
「「おおーっ!」」
僕は物凄いショックだったけど、何とか踏みとどまって彼女を祝福した。
「さー、次は誰に教えよっかな」
そう言って、伊藤さんはさっさと行ってしまった。
三枝さんは、僕の方を見た。
「大変ね」
「何が?」
僕はすっとぼけたつもりだったが、三枝さんはますます憐れなものをみる目で僕をみていた。
「好きなんでしょ、美鈴のこと」
「・・・知ってるなら、確認しないでよ」
「そっちがとぼけるからいけないんじゃない。あーあ、誰かに先、越されちゃったわね」
「・・・でも、伊藤さんが決めたことだし」
「ふーん、藤原君はそれでいいんだ。けなげねえ」
「そんなんじゃないよ」
僕はそれっきり、黙っていた。
三枝さんは、気の毒そうに、それでいて面白そうに僕のことを見ていた。
伊藤さんが、高橋とかいうヤツに告白してOKをもらった日は、まさに悪夢だった。
だけど、悪夢っていうのはずっと続くんだよね。
伊藤さんときたら、高橋とやったことを延々僕に聞かせるんだもん。たまんないよ。
「前の日曜日ね、遊園地に行った」
とか、
「今日学校で教科書とノート貸してあげたら、ありがとうって手紙つきで返してくれた」
とか、
果ては、
「前のデートのときに、初めてキスされちゃった!」
とか。
そういう話はたいてい三枝さんと一緒に聞いてたんだけど、いちいち話が終わるたびに彼女が僕を憐れんだ目でみてくるんだ。
・・・そりゃあ、僕だって心が痛いよ。好きな人が別の男と付き合って、どんどん仲良くなってるみたいだもん。
でも、なんか伊藤さん幸せみたいだし。僕に他に何ができるって言うの?
今僕が伊藤さんに好きだなんていっても、彼女が困るだけだし。かといって、いきなり友達止めますっていうのも彼女が変に思うだろうし。
結局、僕はずっと彼女の幸せ話を聞いてないとダメなんだ。
・・・そう、思った。
でも、『キス』の話の後で、三枝さんが僕に言った。
「よく平気だね、美鈴が他の男にファーストキスあげちゃったんだよ?」
「・・・平気じゃないよ」
実際、もう耐えられないかもしれないと思う。
伊藤さんのファーストキスが欲しかったわけじゃないけど、彼女が初めてキスしたのが自分以外の誰かだったっていう事実は永遠に消えない。
それは、悔しかった。
それが伊藤さんの本心から出たものであっても。
三枝さんは僕のことを心配そうに見て言った。
「もう、美鈴の友達なんか止めといたら? ずっとあんなこと聞かされて、藤原君もうダメなんじゃないの?」
「でも・・・突然そんなことしたら、きっと伊藤さんが悲しむし」
僕がそういうと、三枝さんは怒ったように言った。
「美鈴のことなんかより、自分のことを考えなさいよ! いい加減にしないとあなた、本当にダメになるわよ!」
僕は何も言い返せなかった。
僕自身、『いい加減にしないといけない』と思っていたからだ。
何も言い返さない僕に、三枝さんはため息をついていた。
「・・・美鈴はいいわよね。彼氏がいるうえに、あなたみたいに真剣に好きになってくれる人がいて」
僕はそれを、黙って聞いていた。
伊藤さんが彼氏と付き合いだしてから、僕の中では少しずつ三枝さんの存在が大きくなってきたんだと思う。
伊藤さんは、憧れの存在だった。
明るくて、可愛くて、眩しい存在だった。
だから、どんどん魅かれていった。
だけど、彼女は僕のことを見ていない。
三枝さんは、伊藤さんの友達ということで少し話をするくらいだった。
だけど彼女は、伊藤さんよりもはるかに僕のことをわかっていて、心配してくれている気がした。
それに、伊藤さんは最近僕らのところよりも彼氏のところに行くことが増えた。
結果的に、僕と三枝さんは二人で話をすることが増えた。
そういうことも、僕が三枝さんに傾いていった理由なのかもしれない。
だけど僕は、自分のそんな気持ちの変化に気づかなかった。
それから数日して、三枝さんは僕を放課後呼び出した。
僕が呼ばれた場所に行くと、彼女は怒ったように言った。
「わたしのこと、どう思ってる?」
「どうって・・・」
考えたこともなかったので、僕は返事に困った。
「じゃあ、美鈴のことは? まだ、好きなの?」
「・・・そうだと思う」
僕は正直に答えたが、三枝さんは顔を引きつらせた。
「そう、よね。じゃあ、わたしのことは・・・好きじゃないのよね」
改めてそういわれて、僕はかなり戸惑った。
「友達としてなら・・・好きだよ。だけど、その、そういう対象として三枝さんのことみたことがなかったから」
「・・・そういうと、思ったわよ」
三枝さんは、唇をかんだ。彼女のやりきれない思いが伝わってきた。
「三枝さん・・・」
「なによ」
「どうして三枝さん、僕みたいなのを好きになったの?」
僕はどうしてもそれを聞きたかった。
「どうして振ったあなたが、そんなことを聞くのかしら」
「だって僕・・・三枝さんからしたら、結構情けないヤツだと思うから」
僕がそう言うと、三枝さんはプッと吹き出した。
「自覚はあったわけね。
ええ、そうね。藤原君、ずっと美鈴のこと引きずってるんだもん。情けないと思ったわ。
でも、ね。情けないって言ったって、誰かをここまで好きになるのは正直わたしにはできないかなって。話してて、ホント美鈴が好きだって伝わってきて。なんだか、羨ましくなったわ。
それに、話してみると結構ちゃんとしてたし。それでかな」
哀しげに、三枝さんは笑った。
僕は声も出なかった。
ただ、自分を好きになってくれた人の好意を断ったことが嫌だった。
三枝さんはそんな僕を見て、苦笑いした。
「そんな顔、しないでよ。わたしが藤原君を振ったみたいじゃない」
「でも・・・」
「・・・ホント、藤原君って、優しくて、情けないヤツね」
そう言って、三枝さんは僕のことを抱きしめた。
「ゴメンね。藤原君がわたしのこと好きじゃないのは知ってるけど」
そういいながら、彼女はいきなり僕の唇にキスをした。
僕のファーストキスは、そんな感じでいきなり持っていかれてしまった。
だけど、そのときは何が起こったかわからなくて、あっという間にキスが終わった。
あとは、三枝さんが少し罰が悪そうにしているだけだった。
僕はその顔を見て、なにかどす黒いものがこみ上げてくるのを感じた。
三枝さんが、罪悪感を感じて、口を半開きにしたままこちらをみている。それに、さっき彼女は自分から僕にキスをしてきた。
僕は、彼女をきつく抱きしめると、キスをしていた。
彼女は、逆らわなかった。
1分以上もキスをした後、僕は彼女のみずみずしい唇の中に舌を入れた。
ディープキスだ。
ぬめるようなキスの感覚に、お互いの理性が麻痺していく。
やわらかい彼女の身体と、ひとつに融けてしまいたい。彼女は自分が好きなのだから、それでいいじゃないか。
数分後、僕らはお互いに裸になって抱きあっていた。
ゆっくりと彼女の胸を揉むと、彼女はハアハアと息を荒げて胸を突き出した。
「熱いの・・・じんじんする」
そう言いながら、彼女は僕の身体に触れた。
僕は、太ももから彼女の秘所に向かうしっとりした感触の肌を撫でながら、彼女の秘所に到達した。
思ったよりもそこは、ねっとりとして濡れていた。
「ぬれてる」
感じたことをそのまま言葉にしただけだったが、
「いやあ」
彼女の羞恥心をくすぐるには充分だったようだ。
だけど、その方が彼女は感じるらしく、どんどんと愛液が秘所から漏れ出していた。
秘所を表面から撫でると、腰を動かして彼女は声をあげた。
僕が彼女の股間に顔を埋めようとすると、必死になって抵抗したが、僕が秘所をひと舐めするだけで、
「ああああ〜ん」
と善がり声を上げて抵抗しなくなってしまった。
彼女の淫らな姿に、僕はペニスの先からぽたぽたと先走りの汁を流していた。
もう、射精寸前だった。
だから、彼女がゆっくりと僕のものにコンドームをかぶせ、脚を開き、ヴァギナにペニスを挿入した瞬間、
「ウウッ」
と暴発して、彼女の中に大量に精液を吐き出してしまった。
生まれて初めて、女性の中で射精した感覚は、とても甘美だった。
だけど、はじめて女性の膣の感覚を覚えたペニスが、それで終わるわけもない。
僕はそのまま彼女のことを気遣いもせず、彼女の上に乗り、ただ腰を振って快感を求め、2度、3度と放出を繰り返した。
彼女がその間、どんな顔をしていたのかは覚えていない。ただ、ときどき声をあげていたことがわかるだけだ。
汗だくになり、ぬめった身体を彼女の上に横たえる頃には、もう夜が近くなっていた。
全てが終わり、彼女が服を着て僕の前に立ったとき、僕は今更ながら自分のやったことにひどい後悔を覚えていた。
彼女は僕の方を見て、何ともいえない顔をしていたが、そのまま黙って出口を指差した。
遅くなったから、帰りましょう。
彼女は、そう言った。
帰り際、三枝さんは言った。
「ねえ」
「藤原君、さ。好きでもない女の子を抱けるような人じゃないって、信じてもいいの?」
淡々と、三枝さんは言った。
僕は、一瞬考えたが、
「うん」
と答えてしまった。
彼女はその返事に少し考え、少しだけ嬉しそうな顔になった。
僕は三枝さんに魅かれている、それはわかる。
だけど、それは伊藤さんよりも強く魅かれているということだろうか。
今の僕には、わからなかった。
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