赤い糸


メガネ

学校帰りに立ち寄った店に、変わった物が置いていたので買ってみた。

500円で売っていた、格安のメガネだ。

黒ブチで度が入っていない伊達メガネで、それだけなら500円の値打ちもない。

だけど、そのメガネは、人の小指と小指を繋ぐ赤い糸を見ることができるメガネだった。

赤い糸

そのメガネで自分の両親を見たとき、僕は父さんと母さんの小指と小指が赤い糸で結んであることに気がついた。

さらに、姉の小指も、家を離れ、どこか遠くに向かって伸びていた。きっと、誰かの小指につながっているんだろう。


僕はそのメガネで自分の小指を見た。その小指も、家の外に伸びて、どこかに向かって伸びていた。

その赤い糸がどこへ伸びているのか、僕はとても気になった。


僕には、好きな子がいたからだ。

翌朝

翌朝、僕はそのメガネをかけて学校に向かった。

途中、2人連れのカップルを見たが、そのカップルの赤い糸はお互いにつながっていなくて、二人の赤い糸は別々に伸びていた。彼らは、いつか別れるということなんだろうか。

かと思うと、全くの赤の他人同士なのにお互いの赤い糸がつながっているという人たちもいた。これは、これから結ばれるということなのだろう。


僕は自分の赤い糸を見ていたが、どうやらそれは学校の中にいる誰かに向かって伸びているらしい。

期待が僕の中に膨れ上がった。

運命

そして、僕は自分の教室に入ったとき、腹の底から沸いてくる興奮に思わず叫んでしまった。クラスの皆からは変な目で見られた。

僕の赤い糸は、まぎれもなく僕が好きになった少女・・・白石真由子に繋がっていたんだから。

彼女は大人しくて静かな感じの少女だったけど、とても清楚な雰囲気を漂わせていて、僕にとってとても眩しい人だった。

そんな彼女が、僕の運命の人だということ。

僕は、その日一日中、不思議なほどに愉快な気分で過ごしていた。

友達から、

「お前、今日変だぜ。なんかヘンなものでも食ったのか? それともそのダサいメガネのせいか?」

といわれても、

「別に」

といってまだ笑っていたほどだ。

友達の言ったことはもちろん当たっていたわけだけど、そんなことを言うつもりはなかった。

告白

翌日、僕は彼女を屋上に呼び出していた。

将来結ばれることが決まっている彼女に、想いを伝えるために。

僕は、自分の小指から伸びる赤い糸が確かに彼女の小指に繋がっていることを確認しながら、勇気を出して言った。

「好きだ、白石さん。つきあってほしい」


彼女は一瞬ハッとしたが、やがてあらぬ方向を向いた。

そして、そのまま、

「ゴメンね、わたし、山田君以外に好きな人がいるから」

と言った。


彼女が握り締めた拳、その小指。

彼女の赤い糸は、たしかに僕に繋がっている。

驚愕

「じょ・・・冗談でしょ?」

僕は目をまん丸にして、喘ぐように言った。

「嘘だよね?」

彼女はこちらを見て、すまなさそうな、憐れむような目になり、

「本当なの」

と小声で言った。


僕は自分の手を顔の前に出した。赤い糸は、自分の小指から、彼女の小指へとちゃんと結ばれている。

だけど、彼女は僕と付き合えないと言った。

ということは、この赤い糸は偽者だ。


僕は腹が立った。腹が立って、自分の右手で左の小指に結ばれた赤い糸を解こうとした。

だけど、糸の感触に触れることすらできない。

この糸は、見えるだけで触れないのだ。

僕はいらだったように手を下ろした。


「誰なんだよ、白石さんが好きな人って!」

僕は怒鳴っていた。

彼女は僕の態度の豹変に驚き、怯えていた。

「誰なんだよ!」

「あ、あの、山田君の知らない人」

「だから、誰だよ!」

「じゅ・・・塾の先生・・・」

「先生だってっ!?」

僕は驚き、同時に彼女に対して憎しみのような感情を持った。

彼女は敏感にそれを感じ取った。

「悪いのっ?」

僕はとっさに自分が彼女を怒らせたことを悟った。

「・・・いや、悪くはないけど」

そういったが、彼女はもうすっかり臍を曲げていた。

「ゴメン。もうわたし、山田君の言うことなんか聞く気になれない。行くね」

そう言うと彼女は僕に背中を向けた。


「待てよっ」

僕は去っていく彼女の手を握ってつかまえようとした。

彼女は、手を握られてこちらを向いた。


一瞬、彼女が怯む。

だけど、彼女はブン、と手を振って僕の手を振り解いた。

そして、階段から階下へ降りていった。


手を振り解かれた僕は、追いかける気力もそがれてしまっていた。

ふと、自分の手を見る。

赤い糸は、いまだに彼女に向かって伸びていた。

ただ、その糸はよく見ると前よりも細くなり、綻んでしまっているようにみえた。


だが相変わらず、それはしっかりと結ばれていた。

後味

昼休みが終わってクラスに戻ると、白石は僕を冷たく無視した。

普段から声を掛け合うような付き合いをしていたわけではないけど、視線をわざと外されたりするようなことはされていなかった。

意識的に彼女は僕を避けていた。


なにが赤い糸だ。全然信用できないじゃないか。


僕は、白石の視線を避けるようにして部活をサボり、家に引きこもった。

メガネをかけたまま、自分の小指を見る。

綻びかけた、赤い糸が、まっすぐに外に向かって伸びていた。

こんなものを信じて告白した自分がバカだった。

おかげで、告白に失敗した。もう二度と彼女と付き合えるチャンスはないだろう。

くっそう・・・。

異変

ベッドに寝転び、メガネをかけて手を眺めた格好のまま僕は眠ってしまっていた。

僕は目覚めたとき、ふと自分の左手を見た。


赤い糸は、無気味な光を放ち始めている。

それが何を意味するのかは分からなかったが、何か禍々しい雰囲気が赤い糸から漏れている。

それを見た僕はとてもじっとしてはいられず、自転車に乗って家を飛び出した。

母さんが何か叫んだようだけど、聞こえない。

糸は、はるか遠くまで伸びている。

その伸びた糸が夜の闇の中、無気味に輝いている。

僕は糸を追って、自転車を漕ぎ続けた。


学校とは反対方向に自転車を漕いだ僕は、自分の行ったこともない地区へやってきていた。

もう別の学校の校区に来ているだろう。それなのに、目的地には着かないのか。

そんなことを思い始めたとき、蛍光灯の光に照らされてどこかの塾の看板が見えた。

赤い光は、その建物の中に吸い込まれている。


あそこに、白石さんがいる。


僕は自転車を置くと、塾の建物目掛けて走った。

事件

塾の建物の中は、誰かが争う音がひっきりなしに続いていた。

ときどき、「ヤメテエ」とか、「イヤ」とかいう黄色い叫び声が聞こえる。

男の怒鳴り声のようなものも聞こえていた。

僕は赤い糸が導くままに、建物に入って3番目の蛍光灯がついた部屋に飛び込んだ。


「やめろっ!」

そう叫んで飛び込むと、着衣の乱れた白石さんと、血走った目をしている中年男性が同時にこちらを見た。

白石さんは僕を認めると、

「助けて!」

といって走ってくる。

中年の男は彼女を追いかけ、同時に僕を睨んだ。

僕は男と白石さんの間に入った。

「どけっ」

男が野太い声で叫ぶ。

僕は男を思いっきり殴った。

男は頬をさすり、僕を再度怒りに満ちた目で睨みつける。

そして、僕は次の瞬間強烈に殴りつけられていた。

衝撃にメガネが吹っ飛び、頬が熱く燃える。

僕はそれでも何とか持ちこたえ、相手に飛び掛った。

相手は僕を蹴り飛ばし、僕は3度ほど床や壁に叩きつけられた。

それでも僕は立ち上がる。

僕が倒れれば・・・彼女は、どうなるんだ。想像したくもないことになるんじゃないのか。

それを止められるのは、僕しかいないんだ。

倒れることはできなかった。

3度目に立ち上がったとき、僕の足元もふらついていた。

だけど、立ち上がった僕があまりにも鬼気迫っていたせいか、男は僕を見て棒立ちになっていた。

その隙に相手に飛びつき、膝蹴りを2、3度相手の鳩尾に入れると、中年の男は腹を抱えて動きを止めた。

そして、その隙に再び顔面を殴りつけた。

男は悲鳴を上げ、僕を怯えたようにみると、部屋から飛び出して逃げていった。

彼女

男が飛び出していくと、彼女は僕に駆け寄ってきた。

「ひどい怪我・・・」

白石さんは、僕の顔をみて心配そうにいう。

「白石さんこそ、大丈夫?」

「わたしは、大丈夫・・・だと思う」

彼女の言い回しは微妙だったので、僕は心配になった。

「大丈夫よ、ただジュースを飲まされただけだから・・・」

そう言いながらも、彼女は火照った顔をしている。

「まさか、白石さん、ジュースと一緒に何かヘンなもの飲まされたんじゃ」

「そうかもしれないけど、・・・でも、一応は大丈夫・・・」


そういう彼女の頬はだんだんと赤くなり、息が荒くなってきている。

そして、僕に対して、なにか期待するような熱い視線を送ってきている気がする。


彼女は媚薬を飲まされたのに違いなかった。

介抱

建物には、水道や冷蔵庫、シャワー室、そしてベッドまであった。

白石さんはどこからかタオルを見つけてきて僕の顔を拭いてくれた。

だけど、彼女の息はどんどん上がってきている。

薬の影響が出始めているのに違いなかった。

「白石さん、やめて」

「でも・・・ひどい傷よ」

「もうこれくらい自分でできるよ、白石さん、冷たいシャワーでも浴びてきた方が」

「わたしのせいで・・・こんなに怪我をしたんだから、わたしがやらないとダメ」

「だけど・・・」

僕は言いよどんだ。


白石さんは苛立ったようにして、テーブルの上にあったコップをつかんだ。

そしてそれを、僕の口に押し付ける。

僕は勢いでそれを飲んでしまった。

それは、オレンジジュースだった。

「し、白石さん、これは?」

「わたしが飲まされたジュースの、残り」

「そ、それじゃ」

「せんせ・・・アイツも、飲んでたの。元気が出るはず、だから」

白石さんは、真剣な顔で言った。

彼女の顔を見ているうちにも、飲み込んだジュースが胃に落ち、そこからさらに深いところまで落ちていく。

しばらくすると、白石さんに触れられている部分がカッと熱くなり、力が抜けていたはずの身体に力が戻った。それと同時に、どす黒い彼女への欲望が生まれていく。

僕らは、薬の力に支配されていた。

押し倒して

僕は彼女をベッドに押し倒した。

白石さんは待ち望んでいたように、自分から僕に唇を押し付けてきた。

僕は夢中でそれに応じる。やがてそれは、舌が入ってくるようなディープキスに変わり、お互いにきつく抱きしめあう格好になった。

彼女は股間を僕の脚に擦り付けてきていた。僕も、ズボンの股の部分を彼女に擦り付けていたから同じだろう。

彼女のシャツをまくり、レースのブラから手を入れると、隆起した乳首が当たった。

「あん!」

ハッキリした喘ぎ声が上がった。

その声で僕は興奮し、乱暴に彼女の衣服を剥がそうとする。

彼女はかろうじて残った理性で服を自分から脱いだ。

僕も慌てて下着まで一気に脱ぐ。

反り返ったペニスがお腹に当たり、彼女はそれを見て目を丸くした。

だけど、彼女は驚いただけで、怖がらない。

むしろ自分から脚を開いて、手で膝を抱え、僕を待ち受けた。


「わたしを・・・抱いて」

ドロドロに濡れ、ところどころ白濁した液を漏らす膣が、僕のペニスを呼んでいた。

セックス

「あんっ」

初めて膣を貫かれたというのに、彼女はあまり痛がらなかった。

媚薬の影響で、極度に興奮しているからかもしれない。

それどころか、白濁した愛液を膣から噴き出し、きつい締め付けの中でスムースに僕のペニスを受け入れている。

「は、入ってる、はいってる・・・」

清楚な彼女が、淫欲にまみれた目で僕をみる。

僕の下から必死で腰を振り続けるその様は、浅ましいほどだった。

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」

僕はその厳しいぬかるみに耐えられず、腰を振りながら、一気に彼女の膣内に射精を始めた。

「ウッ、ウッ、ウウッ・・・」

だけど、僕のペニスは一瞬も小さくならなかった。

僕は瞬間的な気だるさを感じたけれど、次の瞬間元気に腰を降り始めていた。

彼女の膣からは、精液なのか愛液なのかわからない白濁したものが流れている。

彼女は、僕の首を抱きしめ、僕の腰に身を任せている。

さっきあの男に蹴飛ばされたときのダメージが嘘のように、僕は腰をしならせて彼女の上で踊った。

ダラダラと汗が流れていく。

それは、彼女の肌にも玉のように浮いている。

彼女のヴァギナは、粘着質の液体にまみれている。それは僕のペニスも同じことだった。


二度目の射精は、しばらくすると訪れた。

僕がハッハッと呼吸を乱し始めると、彼女はそれを察したようだったが、何も言わなかった。

そして、腰の動きが大きくなり、彼女の最も深い部分にペニスを突き刺して射精を始めたとき、彼女は、

「あああん!」

と喉をあげて喘いだ。

そして、射精の痙攣で何度も奥を突くと、そのたびに、

「アアン! あん、あん!」

と善がった。


射精後の気だるさから脱すると、また僕は動き始めた。

彼女も微妙に腰をゆすっている。そして、その口は半開きになり、感じているようにも見える。

僕は彼女を深く突き刺すことを繰り返した。

「あん! あん! あん! あん!」

口を開けたまま、彼女は愛らしい声で鳴き続ける。

その声は、僕を興奮させた。

何度も何度も奥を突くと、彼女はそのたびに善がり声を上げた。

僕が激しくすると、たまらない、というように彼女はベッドを掴んだ。

「ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア!!」

すがるような視線で、彼女は僕を見上げる。

男として、自分が白石真由子に求められている。

僕の腰は狂ったように自動で動いていた。


三度目の射精は、彼女がオルガスムを迎えたときだった。

身をよじり、白い喉をみせて喘ぎ続ける彼女は、僕に奥を突かれ、クリトリスを巻き込んでピストンされることに耐えられなくなって、ついに小さく叫びを漏らすと膣を震わせた。

突然のきつい締め付けに、僕は彼女が何か違う生き物に変わったのではないかと思ったほどだった。

ペニスは痛いほどに絞られ、僕はそのままペニスが食べられてしまうのではないかと怖くなった。

だけど、それでもいい。

このまま、白石真由子に食べられてもいい。

そして、僕は3度目の射精をした。

脳天が白く痺れるような感覚が、いつも以上に激しく襲ってきた。

あの後のこと

こうして僕らは結ばれた。

周囲は、ウブだった彼女が突然彼氏を持ち、しかも艶かしい雰囲気をみせはじめたことに驚いていた。

まだ幼さをみせていた身体のラインも急に絞られ、腰のくびれが真由子を色っぽく見せていた。

クラス中の男子が、真由子を見るようになった。


だけど、真由子は僕のものだ。

身体の関係から始まった僕らだったが、その後もほぼ毎日デートとセックスを繰り返すようになった。

媚薬によって強烈なセックスの味を覚えた真由子は、初めての相手である僕から離れられなくなってしまっていたのだ。

初体験で深い快感を覚えた真由子は、媚薬なしでも二度目のセックスで絶頂を感じた。三度目には、僕が2度射精する間に5回も達していた。

もともと真由子は、感じやすかったのに違いなかった。


あのメガネはどこかへ行ってしまったが、もう必要はないだろう。


ただ、僕としては、もっとロマンチックな出会いを求めていたはずだったのだけれど。

2006/9/4 佳情。

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