萌雀掲載作品。
僕が教室に戻ってくると、幼馴染が僕の机の上に座っていた。
お尻を机の上に載せ、足を組んでいる。行儀は悪いが、ちょっとカッコいい。
「なんだ、その顔だとまたフラれたのか」
「何だとは何だ。・・・ヒトの失恋を馬鹿にする気か」
「そういうつもりはないんだが。いつもいつも、相手に直接会って大真面目に告白して、そんでもって半泣きで帰ってくるから呆れている、なんてことはないぞ?」
「・・・うるさいなあ」
僕は文句を言ったが、幼馴染は面白そうに笑っている。
僕はハッキリいって、モテないタイプなんだろう。
今日、高校に入って8度目の告白をしてきたところだ。結果は、今回も「ゴメンナサイ」だった。
失恋をすること8度。いつからか、告白の後、教室に戻ってくるとこの幼馴染が教室に居残っているようになった。
面白がっているのか何なのか。よくわからないが、フラれたときに限ってコイツは教室に残っていて、僕にちょっかいを出してくる。
なぜ、コイツは、告白の日時を教えもしないのに毎回毎回教室にいるのか・・・これは謎だ。
僕がくだらないことを考えていると、幼馴染は足をプラプラとさせながら言った。
「いいかげん、近場で手を打ったらどうだ? お前は面食いすぎるんだ。どうしていつも、彼氏をとっかえひっかえしてるようなキレイどころばかり好きになる?」
「・・・え、そうだったの? さっき告白した子なんて、好きなのは僕だけだろうと思ってたのに・・・」
「あのなあ、彼女は美人でかなり有名だぞ。なぜにそんなことも知らないで告白しにいく?」
「そう言われても・・・」
「とにかく、その辛気臭い顔をやめろ」
そういって、幼馴染は僕の机から降りた。
そして、僕の脇にガツンとエルボーを一発。
「グエッ・・・」
「なんだ、だらしのない奴だな。かるーく一発、入れただけなのに」
「軽くないぞ、さっきのは・・・っ、ゴホ、ゴホ」
「まあ、元気を出せ。なんなら、今日からわたしと付き合うか? わたしならいつも言っているが、いつでも構わないんだぞ?」
これは、僕がフラれるたびに幼馴染が言ってくる台詞だ。
もちろん、冗談だろうけど。
それに、コイツの場合、本当に付き合うとなると・・・。
「冗談。お前と付き合ったら、いつも暴力を振るわれる」
さっきのエルボーみたいな、乱暴な扱いに耐えないといけなくなるしな。僕、もっとおしとやかな子が好きだし、うん。
僕がいつものとおり、お断りの返事をすると、幼馴染はヤレヤレ、と首を振った。
「・・・そうか。お前がそういうんなら、しょうがないな・・・」
幼馴染はしばらく黙っていたが、やがて僕にニッコリ笑いかけた。
「じゃあ、いつものとおり、フラれた後は一緒に帰ってやるとするか」
「そんなこと、頼んでないぞ」
「いいからいいから。幼馴染のよしみで、ゆっくり話を聞いてやる。今回は、どういう感じだったんだ?」
「・・・うるさいなあ」
僕は憎まれ口を叩きながらも、フラれた後はいつも彼女に失恋話を語っている。
こんな話のどこが面白いのか。それはわからないが、幼馴染は結構黙って聞いてくれている。
こういうのが、コイツなりの励ましであり、優しさだったんだと気づいたのは、ずっと後のお話。
続編、甘い香りの武器はこちら。
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