萌雀掲載作品。
夏も終わろうとしていたある日のこと。
僕が文子さんの部屋に行くと、いつもはスカートを履かない彼女がミニスカートを履いていた。
「どうしたの、それ」
「何よ。わたしがミニスカート履いたら悪い?」
「悪くはないけど」
しかも、彼女は黒いニーソックスまで履いていた。
いや、一度こういう格好をしてほしいな、とか思ってたけど。でも、彼女が何の脈絡もなくこんな格好をするとは思えない。
「あの、なにかあったの?」
「わたしは何かないと、お洒落をしないと思われてるのかしら?」
「いえ、そんなことは」
ごめんなさい、本当はちょっとそう思ってました。
だって、文子さんって、部屋の中じゃジャージの上下とかハーフパンツとか多いし。
よそ行きのときは、それなりの格好だけどさ。
「でも、博也君の好みがこういう格好だったことは知ってたわよ」
「え?」
「だって、こないだ街で見かけたこういう格好の女の子が気になってたみたいだし、ね? ・・・わたしが隣にいたのに」
「あの、それは、脚が丸見えで思わず目が行ってしまっただけで」
「別にそういう弁解を聞きたいわけじゃないわ」
文子さんはそう言って、脚を組み替えた。
・・・思わず目が脚に、その付け根の方に。
パンツが見えるとか見えないとかではなく、視線はそちらに集中してしまうもの。
「・・・まあ、いいわよ。その辺のことは勘弁してあげるわ」
僕の視線を感じて、若干眉をひそめながら、彼女はそう言った。
「あの、ひょっとして今日のその格好は、街で見かけた女の子への焼き餅か何か?」
「違うわよ。あなたの興味のある格好をしてみたかっただけよ。
さ、さあ、今日は二学期始まってすぐの実力テストに向けて、勉強するんでしょう? 早く始めましょう」
そう言って、彼女は机の上の数学の問題集を手に取った。
・・・本の上下は、逆さまだった。
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