萌雀掲載作品。
(萌雀にリンクを張ったので、記念作)
2学期開始早々の実力テストが終わった日のこと。
僕は、文子さんと学校から一緒に帰ってきて、彼女の部屋にお邪魔した。
文子さんは、着替えてくるわね、と言って自室に入っていった。それ自体は、いつものことだった。
僕は二人がけのソファでくつろぎながら、彼女を待っていた。
そして・・・彼女が部屋から出てきた。
僕は思わず、彼女に声をかけていた。
「あ、文子さん、その格好は何でしょうか?」
「何か、おかしい?」
「おかしくはないけど、そ、そそ、そんな服持ってたっけ・・・?」
文子さんは、ピンク色をしたキャミソールのワンピースを着て自室から出てきた。肩は剥き出しだ。胸元も開いていて谷間が見えそう。
うー・・・、これは、たまらない。
いつもはジャージだったり、上はTシャツで下はハーフパンツだったりするのに、どうしたんですか一体。
「ねえ、わたし、可愛い?」
「え・・・あ、うん」
「じゃあ、ちゃんと『可愛い』って言ってみて?」
お、おかしい。今日は明らかに変だ。
「口に出して言わないとダメなの?」
「ダーメ。はっきり、『文子、凄く可愛い』って言わないとダメなんだから」
頬を膨らませて、文子さんは顔を横に向けた。
な、なんだ、この違和感ある言葉遣いは。
普段の彼女なら、気まぐれでこんなこと言ったとしても、せいぜい頬を赤らめながら『可愛いってハッキリ言ってよ』なんて言うくらいだろう、うん。
とはいえ、何か彼女の言葉に乗らないとダメっぽい雰囲気だし。
「あ、文子さん・・・可愛いよ」
「むう、文子さん、じゃなくて『文子』。可愛いよ、じゃなくて、『凄く』可愛いよ。そうじゃなきゃ聞いてあげないわ」
彼女は『文子』と『凄く』を強調した。
「そんな、恥ずかしいってば」
そう反論すると、彼女は、むー・・・、という表情になった。
はあ、しょうがないなあ・・・。
「文子・・・凄く、可愛いよ。似合ってる」
僕が恥ずかしさを押しやって文子さんを褒めると、文子さんは、言わせてやった、とばかりにニンマリとした笑みを浮かべた。
その笑顔を見て、僕は、猫っぽいなあ、などと思ったのである。
「ところで、・・・文子さん、さっきはどうしちゃったの?」
しばらく経って、僕はそう尋ねた。
二人がけのソファに隣同士で肩を寄せ合って座りながら。
文子さんは、僕の質問に対して、
「こないだ妹に勧められたのよ。『お姉ちゃんも、たまにはお洒落したり甘えたりして、彼氏に可愛いって言わせないとね。そうしといたら、男なんてイチコロだから』って。」
と答えた。
「妹って・・・どの妹?」
彼女には三人の妹がいるが・・・こんなこと言い出しそうなのは。
「すぐ下の妹の静だけど?」
はあ、やっぱりか。・・・恥ずかしい台詞を言わされた僕としては、ハタ迷惑な話だ。
文子さんは、そんなことを思っている僕の目を覗き込んで、
「やっぱり、嫌だった?」
と訊いた。
「嫌じゃないけど・・・ちょっと不自然かな? もうちょっと普通にしてくれた方がいいかな」
苦笑いしながら僕は答えた。
「ふーん・・・普通に、ねえ」
文子さんは首を傾げた。
そうすると、僕の方に文子さんの頭が寄りかかる格好になる。
う、可愛いかも。
「ねえ」
「何?」
「今日、わたし、テストですっごく頭使ったのね」
「うん、知ってる」
「頭がすごく疲れてるの。ナデナデしてくれたら、嬉しいかも。あ、もちろん耳も一緒に撫でてね?」
そう言って、文子さんは、僕の肩にしなだれかかって、目を閉じてきた。
うう、剥き出しの肩が。黒くてつやつやの髪が。長いまつげの大きなまぶたが。長い綺麗な耳が・・・。
僕はその場で彼女を抱きしめて押し倒したくなる衝動を抑えながら、仰せのままに、頭をナデナデし、耳を撫でてあげた。
ちなみにその後、彼女は眠ってしまい、僕は眠った彼女を抱っこ(お姫様抱っこ)してベッドまで連れて行ってから帰るハメになった・・・。
感想・誤字等はこちらまで。
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